アート&レビュー

名優、高倉健さんをしのぶ

あなたへ 俳優 高倉健

2012/8/17

日本映画を代表する俳優、高倉健さんが亡くなりました。主演した映画「あなたへ」が公開された2012年、日経電子版に連載した「高倉健のダイレクトメッセージ」では誠実な人柄が伝わり、読者からも多くの反響が寄せられました。当時の連載を再掲し、高倉健さんの優しさ、芯の強さを改めて伝えます。
『あなたへ』の降旗康男監督とは1965年『昭和残侠伝』の助監督時代からのお付き合いになる((C)「あなたへ」製作委員会)

降旗康男監督とは1965年『昭和残侠伝』の助監督時代からのお付き合いになりますから、もう半世紀に近づいています。

『冬の華』『駅 STATION』『居酒屋兆治』『夜叉』『あ・うん』『鉄道員(ぽっぽや)』『ホタル』など思い出深い作品を、沢山(たくさん)撮っていただきました。

■不思議な人

届いた「あなたへ」の台本を持って訪ねたご自宅。最初のお茶を淹(い)れてくださった奥様が下がると、それからのお茶は監督自らの手で注いでくれます。

2005年の「単騎、千里を走る。」以来、5年以上もブランクを空けていた私に、新作の構想を熱く語るわけではない。攻めてくるわけでもない。それなのに、おいとまをした帰り道には、「よし、やるぞ!」という気持ちが固まっているのですから、本当に不思議な人です。

降旗監督は、撮影現場でも特別な存在です。人を威圧したり、大きな声を出したり、走り回ったりする姿を見たことも聞いたこともありません。それなのに全スタッフが緊張感を持って「あの人のために…」と、心血を注ぐ。監督は、そうした努力に労いの言葉をかけるわけでもなく無言なのですが、できあがった作品からは、俳優だけでなくエキストラ、大道具、小道具など、その映画に関わったスタッフとキャスト全てへのやさしいまなざしが伝わってくる。

それが降旗作品なのです。

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