大阪松竹座七月大歌舞伎又五郎・歌昇襲名の掉尾、吉右衛門・仁左衛門ら奮闘

三代目中村又五郎と四代目中村歌昇の親子襲名披露。その掉尾(とうび)を飾る大阪松竹座の七月大歌舞伎は播磨屋一門を束ねる中村吉右衛門をはじめ、上方の片岡仁左衛門らが花を添えて大阪らしい襲名披露の舞台を届けた。

昼の部は「双蝶々曲輪日記(ふたつちょうちょうくるわにっき)」の「引窓(ひきまど)」で幕開け。中秋の名月の前夜、大坂で殺人を犯した力士の濡髪長五郎(片岡我当)が逃亡の途中に訪ねた京都・石清水八幡宮に近い生家が舞台。母お幸(中村東蔵)らは再会を喜ぶのもつかの間、地元の代官となった義理の息子の南方十次兵衛(中村梅玉)から長五郎がお尋ね者となっていることを知る。母と子、そして義理の子の情愛が激しく揺れ動く場面だ。

地元が舞台とあって関西での上演は多く、一昨年7月の松竹座、昨年9月の大阪・新歌舞伎座、11月の永楽館(兵庫県豊岡市)と、最近3年間で4回目となる人気演目。また母お幸は先代又五郎の当たり役の一つだった。かつて共演している我当は「慈愛に満ちた素晴らしいお幸だった」と振り返る。

続いては又五郎の襲名披露演目となる狂言舞踊の「棒しばり」。主の大名(中村錦之助)の留守中にいつも酒を盗み飲んでいる次郎冠者(又五郎)と太郎冠者(市川染五郎)だが、ある日、外出する大名が用心のため2人を棒などで縛り上げてしまう。それでもあの手この手で器用に酒を酌み交わした揚げ句に「ひとしお酒がうまいようでごじゃる」とご満悦。帰ってきて怒る大名に棒術をまねて逃げ去るという痛快さで客席を沸かせる。襲名演目に舞踊作品の多い又五郎は「亡くなった中村富十郎さんに教えてもらった。(能・狂言を題材にした)松羽目物らしく、品格を保って勤めたい」と話す。

そして昼の終幕は仁左衛門と吉右衛門が顔を合わせた「江戸絵両国八景 荒川の佐吉」。真山青果の脚本で、大工の棟梁(とうりょう)からやくざの子分になった佐吉(仁左衛門)の忠義と親心、男の友情を描いた世話物だ。「棟梁がその立場を捨ててやくざの子分になるが、なかなか板に付かない面がある。そこが芝居の面白み。子育てというテーマもあり、娯楽作品として良くできている」(仁左衛門)。約2時間で4幕8場とテンポの良い構成。「分かりやすく、泣けて、気持ちの良い作品だが、体力的には疲れる。いつまでもやれる役ではない。舞台は一期一会。これで最後になるのかなという意気込みで臨んでいる」(同)。

夜の部は吉右衛門が主演する「義経千本桜 渡海屋(とかいや)・大物浦(だいもつがうら)」から。源義経一行に追いつめられた平知盛(吉右衛門)が碇の縄を体に巻き付けて勇壮に海に身を投げるラストシーンが有名な一幕だ。前半は海辺の船宿を舞台に一見のどかに物語が始まるが、そこには武蔵坊弁慶(中村歌六)ら源平の武将たちが身分を隠して出入りしている。その伏線から後半一気に合戦物の世界に舞台が一変する。吉右衛門の知盛は2009年10月の東京・歌舞伎座公演以来。当たり役の一つだが、こちらも「なかなか大変になってきた。最期の落ち方がみっともなくなるといけないので、これで最後かもしれない」と話す。知盛の最期は満身の嘆きとともに背中から海に落ち、両足を上げて岩陰に消えて行った。

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