進まぬ学校法人への転換

とりわけ経営が苦しいのは個人立。自治体は教育の継続性を求め学校法人への転換を促すため、個人立や宗教法人への補助金を低くしている。東京都の場合、園児1人あたりの補助金は学校法人の4分の1だ。

だが、転換は容易ではない。学校法人になると土地・建物を実質、国に寄付する形になる。東京都内のある幼稚園経営者は「将来閉園するとき、土地を国にとられると思うと踏み切れない」と話す。

増加する共働き家庭にとって、現状の幼稚園が利用しにくいことも大きい。子どもがいられるのは通常午後2時から3時ごろまで。多くの園が預かり保育を提供しているが、保育園のように親がフルタイム勤務でも迎えに行ける午後7~8時台まで行う施設は少ない。10年前は幼児の60%が幼稚園に通っていたが、現在は55%に低下している。

こども園になると収入減も

国や自治体は保育園の待機児童対策のため、幼稚園と保育園の機能を併せ持つ認定こども園への転換を促すが、それも簡単ではない。東京都大田区の北糀谷幼稚園の預かり保育は午後5時まで。滑川良一園長は「子どもを長時間預かることに疑問がある」と話す。親と子が一緒に過ごす時間の大切さを説いてきただけに、葛藤があるようだ。

また、幼稚園が未経験の0歳児保育を、こども園認定の要件とする自治体が多いことも壁になっている。

それでもこのままではじり貧と、認定こども園に打って出た個人立幼稚園もある。埼玉県境に近い東京都足立区の杉の子幼稚園は3年前にこども園に転換し、360人程度まで減った園児を380人に回復させた。だが、埼玉側の自治体と区の補助金の差などから「全体の収入は少し減った」(金杉紀美子副園長)。

個人立幼稚園は経営者の熱意で良質な教育を提供し、その姿勢が地元に愛されてきた面がある。国や自治体も地域の志に頼り、幼稚園という仕組みを成り立たせてきた。無論、幼稚園が共働き世帯などのニーズに対応し経営努力を続けることは必要だが、それにまかせていいのか。子どもの居場所のあるべき姿を考え直すべき時期に来ている。

全日本私立幼稚園連合会によると、2011年5月時点で全国約8230の私立幼稚園のうち個人立は416園で、全体の5%にとどまる。ところが東京都では860園のうち個人立が193園と、比率が2割超に高まる。

東京都で学校法人に転換していない個人立の幼稚園が多い背景には、地価の高さがある。最終的に幼稚園経営が成り立たなくなったときには、土地を売るなり、別の活用方法を考慮する経営者がいるとみられる。

また、人口流入が続いていたことも要因の一つ。若い世代が集まり、常にその子どもたちの教育ニーズがあったことが、幼稚園経営の支えになっていた。だが、ここ数年、少子化で都内でも園児の数が減少。休廃園が目立ってきた。人気の住宅地が多い杉並区でも、すでに個人立2園が廃園を決めている。

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