幼稚園が消える~毎年100以上廃園に

幼稚園が消える。少子化や増え続ける共働き世帯の子どもの保育園利用で経営が悪化。休廃園が相次いでいる。国は保育一体型施設への移行を促すが、幼児教育の中心的な役割を果たしてきた立場からの抵抗も根強い。子どもたちの未来に直結する幼稚園の今を追う。

東京・西新宿の高層ビル街。木造平屋の古い建物がぽっかりと空いた谷間にある。1954年開園の淀橋幼稚園だ。名取愛さん(37)が同園に通う次男の保護者会で、翌年春から園児募集を停止して廃園すると聞いたのは2年前の秋だった。

60年の歴史に幕

夫も長男も世話になったこの園に三男を通わせようとしていた矢先。名取さんら保護者が声をあげ、廃園は1年延期になった。三男は入園できたものの、今春の年少組から募集は打ち切り。三男のいる年中組20人が卒業する2014年春、60年の歴史に幕を下ろす。

「家庭への便りや遊戯会のプログラムは全部手書き。しつけも厳しくて、言うことを聞かなかった子が年長になるとしっかりする。人気の園だった」と寂しそうな名取さん。募集停止で、近隣には隣の渋谷区や中野区内の園にバスで通う子が出始めたという。

園長の石森雅子さん(77)によると75年ごろの園児数は約250人。それが徐々に減り昨年は110人ほど。「180人ぐらいいれば赤字にはならないが……」。個人経営のため貯金や不動産収入で穴埋めしてきたが、高齢になり、後継者もいないので廃園を決断した。「うち独自の教育をしてきたから、それをつなげないのは、そりゃあ寂しい」。石森さんは涙ぐむ。

毎年100以上の幼稚園が消える

文部科学省によると全国の幼稚園数は85年の1万5220が最多。その後減少に転じ11年には1万3299。新設や休園施設も含まれるため正確な数はわからないが、ここ10年ほどは毎年100以上が消えているというのが有力な見方だ。

影響が大きいのは園児160万人の8割強が通う私立幼稚園の休廃園。全日本私立幼稚園連合会によると11年5月までの1年間に休廃園した私立園は50超。淀橋も私立で「個人立」という個人経営の園にあたる。

幼稚園の経営コンサルタント、雑賀竜一氏によると、私立園の多くは終戦後と73年前後のベビーブームの子どもを受け入れるためつくられた。「広い土地を持つ個人や寺・神社などの宗教法人が地元の要望を受け設けた」。現在、私立園の9割は学校法人だが、個人立や宗教法人から転換したもので、多くは小規模の家族経営というのが実態だ。

注目記事
次のページ
進まぬ学校法人への転換
今こそ始める学び特集