エビの時代がやってきた 札幌ラーメン最前線出張グルメの達人・札幌編(1)

札幌はラーメンの街だ。戦後まもなくの屋台からラーメン横丁が生まれ、味噌ラーメンが誕生したのもこの地から。伝統を守る老舗と、新たな味を生み出そうとする若い店主たちが競い合い、バラエティー豊かな味を楽しめる。出張で札幌を訪ねたら、ぜひ食べ比べに足を延ばしたい。絶品を求めてラーメンの街に飛び出した。

ラーメン全国大会で準優勝

いま、札幌で最も熱いのがエビ系ラーメンだろう。サクサクと歯応えのある桜エビをまぶしたり、甘エビで濃厚なだしをとったり、油にエビの香りを加えたり。香ばしいエビ味とラーメンを合体させる各店の工夫が光る。

「元祖海老(えび)そば」を掲げるのが札幌市の郊外、JR新札幌駅のショッピングビル「新さっぽろアークシティデュオ1」の5階にある「札幌らーめん縁や(えにしや)」だ。

1999年、ラーメン店の殿堂である新横浜ラーメン博物館が全国から新しいラーメンを発掘するため、「激突!ラーメン登竜門」と題して斬新なコンセプトのラーメンを募った。集まった344軒の中から、準優勝に輝いたのが縁やの海老そばだった。

ラーメン1杯あたり甘エビ25匹分からだしをとる。「開発まで5年がかり。エビの頭を焼いてからスープをとる和食の手法は、エビのラーメンをつくろうと決めて悩みに悩み抜いた末に、仲のいい居酒屋の店主から聞き出したもの」と店主の野本栄二さん。

スープ開発に5年かけた火付け役

オーブンの温度を上げて、エビの表面がカリッとするように焼き上げることで、イメージ通りの味と香りのスープが完成したときには思わず「これだ」と力が入ったという。

しょうゆ、塩、2種類の味噌(みそ)の味がそろうが、ちょっぴり辛めの赤味噌を使った海老そば(780円)を注文した。大きめの丼の中に、のり、チャーシュー、メンマに刻みネギというシンプルな具が載っている。

最初にスープを味わうと、確かに濃厚な香ばしさがある。強い印象の後に、じわっと染み込むように味が広がり、エビの味噌汁を飲んでいるかのようだ。

ラーメン博物館のコンクール受賞後、「今までになかった味のラーメン」として話題をさらった縁やは東京・池袋の東武百貨店などに出店し、首都圏でもファンを広げた。

野本さんは「若いラーメン店主から『子どもの頃食べた縁やの海老そばを自分なりに表現して新たな味にしたい』と声をかけられる」と話す。登場から10年を経て広がる、現在の札幌の海老そばブームは、縁やを原点にして生まれたに違いない。

「エビだしのラーメン店が次々と出てきた。だから海老そばという名称を商標登録しなよと勧める人もいた。でも、たくさんの人に食べてほしいから、そんなことはしない。いろんな店が競って独自の味を生んでほしい」という野本さんの言葉が印象的だった。