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シアタークリエ「ええから加減」 直美と高畑、間絶妙の漫才コンビ

2012/7/10

新しい上方漫才コンビが誕生した。ツッコミの藤山直美とボケの高畑淳子。「ええから加減」という仲の悪い漫才コンビを主人公にした舞台での話だが、どうしてどうして、プロはだしの出来栄えなのである。父親が松竹新喜劇の藤山寛美である直美には手なれた芝居かもしれないが、新劇出身の高畑にとっては、いくら喜劇的センスがあるといっても漫才師を演じるのは大車輪の発奮を要したことだろう。まさに熱演であった。

芸道ものと言われるジャンルにくくられるが、笑いとペーソスにあふれ、人情の機微をきめ細かく描いた好舞台だ。原作は2004年にオール読物新人賞をとった永田俊也の作品で、劇団ONEOR8を主宰する田村孝裕が脚本・演出を担当した。仲の悪い芸人コンビを主人公にした作品は有名なものでは川口松太郎の「鶴八鶴次郎」、ニール・サイモンの「サンシャイン・ボーイズ」などがあり、いわば芸道ものの王道である。

おおよど劇場の舞台から始まる。演じるのは、毒舌の海野濱子(直美)とどこか愛敬のある海野宇多恵(高畑)。漫才コンビを組んで25年、その仲の悪さは有名である。実力のある中堅漫才師として人気はそこそこだったが、最近は若手の漫才コンビ、アキラ(加藤義宗)とタツオ(矢部太郎)の人気に押され、この日もテレビ収録で遅れた2人をカバーし、時間を延ばしてやっていた。濱子は、リストラされた後、料理、掃除など主夫業にいそしむ夫、伸一郎(赤井英和)に男のかい性がないと不満をためこむ毎日だった。そんなある日、宇多恵が今年の上方演芸大賞を目指そうと言い出し、濱子も次第にその気になっていく。受賞のために新ネタを考え、全国津々浦々を回って持ちネタを練り直す二人だったが……。

舞台が成功している最大の要因は、直美と高畑、二人の掛け合い漫才が本当に面白いことだろう。ツッコミとボケの間合いが絶妙で、舞台だけでなく、私生活までも漫才のノリでやるのがおかしい。持ち上げたり、下げたり、いなしたり、緩急自在の直美の演技は天才芸である。アドリブも適当に入って、その日その日でやりとりは違っているのだろう。

3世代の芸人が登場する。濱・宇多の中堅コンビ、人気急上昇中の若手コンビ、かつて一世を風靡した老師匠の泰平(逢坂じゅん)。人気を鼻にかけて先輩に敬意を払わないアキラは、自分が作った間についてこられない相棒のタツオにハラを立てる。これに対し、間とはその日のお客で変わるのだと諭す老師匠の泰平。芸にかけるそれぞれの生き様、ぶつかり合いが芝居に深みを加える。

実は宇多恵は所属事務所の専務、堤(田山涼成)の口利きでテレビのレギュラーメンバーになる予定で、コンビ解消を迫られていたが、このことを濱子には秘密にしていた。宇多恵は最後に上方演芸大賞をとってコンビ解散を免れようと考えたのだが、死ぬほど嫌だと思っていた濱子といざ離れるとなると離れられない自分を見いだすのだった。芝居の中で、いい漫才を見れば嫌なことも忘れる、と老師匠の泰平が言うが、この芝居を見ていると消費税増税などいやなこともしばし忘れることができる。(編集委員 河野孝)

29日まで、シアタークリエ。

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