相場と格闘したチーフディーラーを支えた読書とは 大和証券グループ本社社長 日比野隆司氏
大和証券グループ本社 日比野隆司社長
企画部門出身のイメージの強い日比野隆司社長だが、実は債券と株のチーフディーラーとして名をはせた時期もある。相場と格闘した20歳代のころ、ぼろぼろになるまで読み込んだ本がある。相場の神様とうたわれた本間宗久の相場分析をまとめた『酒田五法は風林火山』(日本証券新聞社)だ。
江戸時代の相場の神様に学ぶ
同書によると、本間宗久は、8代将軍吉宗の時代に出羽の国庄内(山形県酒田市)に生まれた。「本間様には及びもせぬがせめてなりたや大名に」とまでいわれた酒田の豪商、本間原光の五男だ。
江戸時代の相場の神様の極意をローソク足分析に仕立てた「酒田五法は風林火山」
酒田は出羽米の大集積地で米取引は活発だった。宗久は米相場を研究、利益を上げて実家に貢献した。後に大阪に移り、堂島の米会所(取引所)を席巻して「出羽の天狗(てんぐ)」と呼ばれ、さらに江戸の取引所にも転戦し、そこでも巨利を得た。
本間宗久の極意をまとめたのが「酒田五法」で、それをローソク足分析に仕立てた本が『酒田五法は風林火山』だ。昭和44年(1969年)に出版されるとたちまちベストセラーとなった。
日比野社長手作りの酒田五法分析表
入社3年目でロンドンに転勤になった日比野さんは、債券や先物部門を任された。このとき、部下に酒田五法を説いて、着実に利益を上げた。日系証券の躍進の時期で大和証券も先物・オプションチームなどを買収、業容がどんどん拡大していた。20歳代の半ばで本社の部長級の仕事を任されていた。いわばマネジャー兼チーフディーラーで、かなりの相場の腕利きとして知られた。
相場師・日比野さんを支えたのが、この酒田五法。ケイ線分析を抽出して表にまとめ、英語訳して部下の英国人に渡していた。「ディーラーたちのバイブルだった」。オプションなんてまだ日本ではまったく認知されていなかった頃の話だ。