ふじのくに⇔せかい演劇祭2012「マハーバーラタ」ほか静岡から舞台芸術の世界性見すえる

東京一極集中の演劇界にあって、静岡を本拠に国際演劇祭を手がける宮城聡は異彩を放つ存在だ。その「ふじのくに⇔せかい演劇祭2012」のオープニングに出かけ、50代前半のこの演劇人が舞台芸術の世界性を見すえていることを改めて実感した。

東京駅から新幹線のひかり号で1時間、静岡の1駅となりに静岡芸術劇場はある。東静岡駅前、船の形をした威容からグランシップと呼ばれる建物は磯崎新が設計した。ここを本拠とする団体SPAC(Shizuoka Performing Arts Center)は今年で結成15周年、今や専属劇団の名前として地元で親しまれている。

バスで移動する日本平の舞台芸術公園は、人里離れた山上の森にこつぜんと現れる劇場エリア。野外劇場「有度」や屋内ホール「楕円堂(だえんどう)」やけいこ場(BOXシアター)がある。これらの施設を利用して、演劇祭が開かれる。

富山県の利賀村や茨城県の水戸芸術館で演劇活動を重ねた演出家、鈴木忠志がはじめに静岡のプランを作った。そのあと2代目の芸術総監督になったのが宮城聡で、就任5年にして独自のカラーが鮮明になってきた。娯楽性と芸術性を兼ね備えた楽しい音楽劇で世界をとらえる目を養ってもらおう。そんな思いが舞台に確かに宿って、観客に開かれた演劇祭が定着しつつあるのだ。

6月2日、SPACの2演目を見た。ともに強力な楽隊を前面にたて、鍛えられた身体の瞬発力と豊かな音楽性が溶け合う舞台。響きはバリ島のガムラン風でもあり、和太鼓風でもあるが、演出の宮城聡、音楽の棚川寛子が生みだす無国籍の調べはハイブリッドだ。文字通りの、異種混合の力強さがある。夢幻空間へと観客を誘い、パーカッションが鮮やかなアクセントを刻む。1980年代、バリの芸能に強く影響を受けた横浜ボートシアターという集団が船の劇場で「小栗判官」などを上演していたが、音楽の練度ではSPACがはるかに勝る。この劇的な音楽性は目下の演劇界で群を抜き、そのまま宮城演出の独創性となって確かな印象を刻む。

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