劇団☆新感線「シレンとラギ」愛と憎しみ、悪が闊歩する一大活劇

劇団☆新感線の新作「シレンとラギ」(中島かずき作、いのうえひでのり演出)は、豪快な「悪党」が闊歩(かっぽ)した南北朝を下敷きにした時代活劇だ。ギリシャ悲劇の世界をかぶせた結果、骨格も大きくなっており、愛と憎しみ、罪悪感が相克するロマンを筆太に描いている。

北と南に分かれた二つの王朝が舞台。北の国は若く愚かなギセン(三宅弘城)を王に頂くが、実権は執権モロナオ(粟根まこと)が握る。王宮は侍所のキョウゴク(古田新太)と息子ラギ(藤原竜也)が守っており、ラギは、暗殺を生業とする一族に生まれたシレン(永作博美)に引かれる。シレンが呼び出されたのは、キョウゴクの命令で南の国に赴き、20年前に毒殺したはずの独裁者ゴダイ(高橋克実)が生き返っているとの報告が入ったためだった。事実ならゴダイを殺すよう命令されたシレンは、同行を願い出たラギを伴って再び南へ潜入する。

南の国ではゴダイの妻モンレイ(高田聖子)や幹部シンデン(北村有起哉)らが仮死状態から目覚めたゴダイが往年の力を取り戻すことができるのかと心を砕いていた。しかし、武闘派ダイナン(橋本じゅん)は北に向かい、昔の仲間キョウゴクと手を組んで天下を取ろうと呼びかける。

後醍醐天皇と足利尊氏が覇権を争う南北朝の時代を描いた「太平記」の世界がベースにある一方、ラギは実はシレンが南の国に入り込んだ時にゴダイの愛妾(あいしょう)として産んだ息子で、ゴダイが実の父だったというギリシャ悲劇の「オイディプス王」の物語が立体的に絡む。さらに、キョウゴクが娘のミサギ(石橋杏奈)に抱く愛が、聖書などに登場するヘロデ王を連想させ、起伏の多いストーリー展開になっている。

しかも、ゴダイは王というよりは、カルト教団の教祖的な存在で、その教義は言葉遊びのように見えながら、なかなか含蓄に富む。

自分の野望のために、王に背いて敵方につき、状況不利と見ればまた寝返るキョウゴクの「悪党」(強者を意味した)的な生き方が、古田の強烈な個性と相まって、ひ弱になっている現代日本の我々の目から見て痛快だ。また、宗教で民衆を束ねるゴダイの高橋に、説得力とすごみがある。

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