ギリシャがアテネ五輪で描いた未来は?編集委員 小林明

写真1 アテネ五輪会場

ユーロ圏からの離脱を回避できるかどうかの瀬戸際に立たされたギリシャは、総選挙後の連立協議が失敗し、6月17日に再選挙を実施することが決まった。世論調査では、財政緊縮策に反対する急進左派連合が支持を広げる一方、財政緊縮策を支持する新民主主義党も盛り返しており、先行きは混迷を深めている。

そもそも、なぜギリシャは世界経済を揺るがすような危機に陥ってしまったのか?

もしギリシャを解体したら……

手元に色あせた資料がある。

アテネ五輪(写真1)を開催した翌年の2005年5月。ギリシャ政府が日本の企業などに向け、ギリシャへの投資の将来性を訴えるために作成したPR用パンフレット(写真2)である。

写真2 ギリシャへの投資をPRする、日本向けのパンフレット

日本語で書かれた冊子(A4判、48ページ)をめくると、五輪スタジアムや新国際空港、路面電車、大型連絡橋などの近代的なインフラ施設がカラー写真で紹介され、ギリシャの「バラ色の未来」が高らかにうたわれている。政府関係者の五輪後の経済発展に対する熱い期待がにじみ出ているようだ。

「もしギリシャを解体したら、最後に残るのはオリーブの木とぶどう畑と船だ。つまり、その3つがあればギリシャは作り直せる」

冊子の冒頭に大きく紹介されたノーベル賞詩人、エリティスの言葉が、国家財政の危機にひんする今となっては、何とも皮肉に聞こえる。

バラ色の未来は「絵に描いたもち」

は当時、ギリシャ経済財務省が公表した経済指標(2005~07年は予測)である。

写真3 アロゴスクフィス経済財務相(2004年8月)

アテネ五輪開催中(04年8月)に筆者が現地でインタビューしたアロゴスクフィス経済財務相(当時、写真3)は「ギリシャの実質経済成長率は4%前後を維持し、政府の財政赤字は06年には欧州連合(EU)の財政基準の対国内総生産(GDP)比で3%以内に収まる。07年には債務残高も対GDP比で100%以内に低下する」と明るい未来を予測していた。

しかし、ギリシャのGDPは5年連続のマイナス成長。政府の債務残高も対GDP比で約160%という現状を考えると、バラ色の未来は「絵に描いたもち」だったことがよく分かる。

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期待を生んだ2つの偉業
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