セルゲイ・ロズニツァ監督「霧の中」

同日に上映されたウクライナのセルゲイ・ロズニツァ監督「霧の中」にも力があった。

舞台は第2次大戦中のソ連西部のドイツ占領地域。列車脱線事件への関与が疑われながらドイツ軍の処刑を免れ釈放された男が、2人のパルチザンに連行される。覚悟を決めた男が森の中で殺されかけたところにドイツ兵が現れ、パルチザンの1人は撃たれて重傷を負う。男は自分を殺しかけたパルチザンを助ける。

ドイツ兵におびえながら、森の中をさまよう3人の姿に、人間の極限状況がすけてみえる。恩讐(おんしゅう)を超えて、生き延びることができるのか。情感を排した冷徹なカメラが生の意味をとらえている。

ハネケに高評価、賛否割れるカラックス

インタビューに答えるミヒャエル・ハネケ監督

映画祭も大詰め。コンペ作品は25日までに20本が公式上映され、あと2本を残すのみだ。マーケット関係者はほとんどカンヌを去り、街は静かになった。

業界誌スクリーン・インターナショナルとフィルム・フランセの星取表(23日までに上映された16本が対象)で、共に最も評価が高いのはミヒャエル・ハネケの「アムール」。24日にインタビューしたハネケは「社会的な作品をつくるつもりはなく、登場人物の感情的なものを描きたかった」と語っていた。

スクリーン誌ではクリスティアン・ムンジウ「ビヨンド・ザ・ヒルズ」がこれに並び、ジャック・オディアール、トマス・ヴィンターベア、アンドリュー・ドミニク作品も評価が高い。フィルム・フランセ誌はオディアール、ムンジウ、そしてレオス・カラックス作品が続く。アッバス・キアロスタミ「ライク・サムワン・イン・ラブ」は両誌とも中位以下にとどまる。

カンヌでの受賞実績があるハネケ、ムンジウ、オディアールの作品がほぼまんべんなく高評価であるのに対し、カラックス作品は賛否が極端に分かれている。果たして結果はどうでるか。

(編集委員 古賀重樹)

エンタメ!連載記事一覧