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「引っ越し」「代行」……墓参りの常識が変わる

2012/5/22

先祖を供養する「墓」に対する意識が変わり始めている。墓の引っ越しである「改葬」や掃除や供養の「代行サービス」を利用する人も増えている。背景には上京や転勤、高齢化などで頻繁に墓参りに行くことが難しい現状もある。

墓の清掃や草刈り、線香もあげてくれる墓参りの清掃代行サービスをはじめたホソダ興産(茨城県)

「自宅近くに先祖の墓があると安心できる」。神戸市に住む男性Aさん(64)は、2009年に故郷の和歌山県串本町から兵庫県の墓地に改葬した。年1回、串本町まで片道5時間かけて車で墓参りをしていたが「今は車で10分程度。妻と2人で毎月墓参りができる」と喜ぶ。

■墓が遠いと不安

改葬を決めたのは将来の不安からだ。子供時代の思い出はあるが、社会人となってからは神戸が生活拠点。自分には故郷でも息子には思い入れがない。「自分が亡くなった後に、遠いだけの墓に行ってもらうのは心苦しい」と打ち明ける。親族からの反対もあったが、「墓を守るのは最終的に長男の自分しかいなかった」という。

厚生労働省の調査では10年度の改葬件数は約7万2000件。10年前に比べて約8%増えた。実際、地方に親戚や兄弟もおらず、墓だけ残っている例も少なくない。90代の両親と都内で同居する女性B子さん(66)は今年、神奈川県秦野市から都立霊園に先祖の墓を改葬した。「両親も東京暮らしが長く、故郷への思い入れもほとんどない。自宅近くに墓を移して、むしろ両親が喜んだ」と話す。

「故郷に親戚・知人がいない」「仕事が忙しく墓に行く時間がない」「体調が悪く長距離移動の負担が重い」――。生活環境の変化で、物理的に墓参りが難しいという人は今後さらに増える見込みだ。そうしたニーズに応えて、墓の清掃や供養を代行するサービスの需要も高まっている。

■高齢者だけでなく中高年層も利用

10年12月から「家事代行と墓の清掃代行サービス」を始めた不動産会社のホソダ興産(茨城県つくば市)では問い合わせ件数が増加中。「高齢者だけなく海外出張する中高年層の利用も多い」(細田健社長)

墓参り代行業者の検索サイト「まいるん」を運営するグローバルゲイト(神戸市)には全国120の企業や個人が業者として登録。1日200~300人近いアクセスがあり、「50~60代の方の利用者が増えている」(同社)。

1回にかかる費用も比較的低額なものが多く、清掃だけなら数千円程度。墓参り代行サイト運営のまごころライフ(横浜市)によると「清掃から供養までする墓参り代行でも花代や線香代、交通費を含め最後に写真を送付するサービスまでつけて1回1万円台が相場」という。

毎年、墓の清掃代行を依頼している和歌山県の女性C子さん(58)は「実家から離れて住む義母から墓の状態を尋ねる電話が絶えないが、毎月草むしりに出向くのは重労働。代行は非常に助かる」と喜ぶ。

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