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モンローが祝う65回 世界最大の映画祭が開幕

カンヌ映画祭リポート2012(1)

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NIKKEI STYLE

マリリン・モンローが車の後部座席で手のひらにバースデーケーキを抱えている。1本立ったろうそくを吹き消す唇の形のよいこと。30歳の誕生日に撮られたこのマリリンのモノクロ写真が、今年のカンヌ国際映画祭の主会場パレ・デ・フェスティバルを飾っている。

コンペの顔ぶれも壮観

 5月15日開幕前日。フランスのカンヌで開かれる世界最大の映画祭も今年で65回目。切りのいい年を祝福するという趣向だ。

ジャーナリストやマーケット参加者らの登録でごった返す開幕前日のパレの内部にも祝祭ムードが漂っていた。記者会見場のある3階から4階への吹き抜けの壁は、マリリンと同じようにケーキを食べようとしている映画人たちの巨大な写真で埋め尽くされた。

マレーネ・ディートリヒとエルンスト・ルビッチ、リタ・ヘイワースとオーソン・ウェルズ、ジュディ・ガーランドとクラーク・ゲーブル、エリザベス・テイラーとジェームス・ディーン……。映画史を彩るグラマラスな女優たちを中心に、巨匠やスターがそろってケーキを食する図は壮観だ。

先に発表された今年のラインアップも壮観だった。例年、大物監督の新作が集まるカンヌだが、顔ぶれを見る限り、とびきりの年といえる。

最高賞のパルムドールを競うコンペティション部門には今年90歳になる仏ヌーベルバーグの重鎮アラン・レネを筆頭に、英国のケン・ローチ、イランのアッバス・キアロスタミ、オーストリアのミヒャエル・ハネケ、カナダのデヴィッド・クローネンバーグと巨匠の新作がずらりと並ぶ。

さらに「リード・マイ・リップス」など緊迫感と人間味を併せ持つ犯罪映画を撮ってきたフランスのジャック・オディアール、2008年にグランプリを獲得し日本でも昨年公開された犯罪映画「ゴモラ」で強烈な印象を残したイタリアのマッテオ・ガローネ、07年に「4ヶ月、3週と2日」でいきなりパルムドールをさらったルーマニアの新鋭クリスティアン・ムンジウの新作もある。

ブラジルのウォルター・サレスはジャック・ケルアック原作の「路上」をもってやってくるし、80年代にゴダールの再来と言われた鬼才レオス・カラックスも実に13年ぶりの長編をひっさげてカンヌに戻ってくる。アジアからは「女は男の未来だ」のホン・サンス、「ハウスメイド」のイム・サンスと韓国の2人の実力派が集う。メキシコのカルロス・レイガダスも注目の映画作家だ。

そのほか「プレシャス」のリー・ダニエルズ(米国)、「ジェシー・ジェームズの暗殺」のアンドリュー・ドミニク(ニュージーランド)、「ザ・ロード」のジョン・ヒルコート(豪州)、「光のほうへ」のトマス・ヴィンターベア(デンマーク)……。いずれも新作が待たれていた第一線の監督ばかりである。

日本人監督は残念ながらここに割って入ることができなかった。ただキアロスタミ監督の「ライク・サムワン・イン・ラブ」は日本で撮影した日本語の映画で、大半のスタッフと俳優が日本人。日本とフランスの製作者が出資した日仏合作映画で、昨年度に創設された文化庁の国際共同製作支援の第1弾でもある。主演の奥野匡と高梨臨らがカンヌ入りする。

昨年のカンヌは久々に日本の配給会社の買い付けが積極的で、コンペ作品20本のうち近日封切りのものも含めて14本が日本で公開されることになった。力のある作品がカンヌに集まる傾向は依然続いており、その多くが大人の鑑賞にたえる話題作だった。カンヌは今後1年の世界映画の潮流を見る絶好の機会なのだ。

さて、顔ぶれは豪華だが、実際の作品の中身はどうなのか。それはふたを開けてみなければわからない。カンヌ映画祭の上映作品は、基本的にここカンヌで初上映される作品ばかりだからだ。

近年、誤りが散見されるのだが、国際映画祭のコンペ作品は映画祭によって選ばれる(セレクトされる)のであって、賞の候補に推薦される(ノミネートされる)のではない。米国のメディアやデータベースなどはアカデミー賞にならい、パルムドールへの「ノミネート」という言葉を使っているが、カンヌ映画祭は一切この言葉を使っていない。

米アカデミー賞は過去1年に一般公開された作品を対象とし、業界関係者からなる5000人以上のアカデミー会員の投票で賞を決める。これに対し、国際映画祭のコンペは未公開の新作を対象とし、映画祭のディレクター(カンヌの場合はティエリー・フレモー氏)が責任をもって上映作品を選び、賞は数人の審査員が討議して決める。根本的なあり方が違う。世界の秀作を一堂に集めて上映することこそが、国際映画祭の第一義的な役割なのである。

カンヌ映画祭のジル・ジャコブ会長は4月のラインアップ発表の席上、こう述べた。「カンヌの偉大さは、映画が発見される特別な瞬間を持ち寄り、分かち合う能力である」。あすからの12日間にどんな発見があるのか。お楽しみはこれからだ。

ウェス・アンダーソン監督の冒険

5月16日開幕当日。朝晩はひんやりする5月のカンヌだが、白亜のパレに照りつける明るい日差しは初夏を思わせる。今年のレッドカーペットを最初に歩いた出品者は「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」で知られるハリウッドの異才、ウェス・アンダーソン監督だ。新作「ムーンライズ・キングダム」がコンペ出品作にしてオープニング作品に選ばれたのだ。

アンダーソンらしいひねりのきいたコメディーだ。アメリカ東海岸のニューイングランド沖の島で、12歳の少年少女が恋に落ちる。2人は秘密の協定を結び、ボーイスカウトの仲間たちや大人たちから逃れて、「王国」を打ち立てる……。

寓話(ぐうわ)的な設定、突飛な物語展開は「ライフ・アクアティック」でも見せたこの監督のおはこである。稚気に満ちているのは子どもたちだけではなくて、大人もそう。アンダーソンならではのワンダーランドなのだ。

なにより作家性を感じさせるのは、人物を画面の中央に置き、カメラが真正面から向き合う構図の徹底だ。平面的でマンガ的ともいえる画面は、スーパーフラットを旗印とする日本の現代アートとどこか似ている。そんな空想的世界で展開する子どもたちの冒険は、寄る辺なき現代人たちの居場所探しのようでもある。

「ダージリン急行」で共に脚本を書き、共に製作したロマン・コッポラと再びタッグを組んだ。ブルース・ウィリス、エドワード・ノートン、ビル・マーレイ、ティルダ・スウィントンなど個性派俳優がずらりとそろって、子役をもりたてる。アンダーソン的世界を突き詰めながら、柄の大きな作品で、プレス向け上映では客席の笑いが絶えなかった。

開会式に先立って、審査員全員による記者会見も開かれた。今年の審査委員長はイタリアのナンニ・モレッティ監督。「息子の部屋」でパルムドールを射止め、昨年のコンペに出品した「ローマ法王の休日」の日本公開も控える名匠だ。

モレッティは「我々は2日ごとに会い、鑑賞した4つの映画について話し合う。一人ひとりの感性は必ずぶつかりあうだろう。私の役目は学級委員のようなもの。大切なのはすべての映画を同じ関心と敬意を払って見ることだ」と語った。

審査員は9人。俳優のエマニュエル・デュヴォスやユアン・マクレガー、監督のアレクサンダー・ペインのほか、服飾デザイナーのジャン・ポール・ゴルチエもいる。

影響を受けた映画を聞かれたゴルチエは、ジャン・ベッケルの映画を見てデザイナーを志したこと、ファスビンダーやアントニオーニの作品に親しんで育ったこと、「ロッキー・ホラー・ショー」が大好きであることを明らかにした。

昨日書いたように、国際映画祭の受賞結果は審査員によって大きく左右される。批評家やジャーナリストの評価と審査員の好みは必ずしも一致しない。賞を占うことは、作品と審査員との相性を予想することでもある。

今年の審査員は男性5人、女性4人。仏2人、英2人、伊1人、独1人と西欧人が大勢を占め、アジアからはパレスチナの1人しかいないのが寂しい。もっともそうした外形的な属性より、モレッティをはじめ個性豊かな芸術家たちのそれぞれの視点と感覚がカギを握るのは言うまでもない。

(編集委員 古賀重樹)

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