右のイラストを見てほしい。
「夏ワナー」という4文字を使った文字列である。
文字列傾斜錯視とは?
実は、奇妙な現象が起きているのにお気付きだろうか? 各文字列とも平行に並んでいるのだが、なぜか左右に傾いているように見えるのだ。
これは「文字列傾斜錯視」と呼ばれる錯覚。東京大学大学院教授で数学者の新井仁之さんと、妻で共同研究者のしのぶさんが作成した作品である。
どうして平行線が傾いて見えるのか? この錯覚は我々にも簡単に作れるのか?
こんな疑問が次々と頭をもたげてくる。そこで今回は、人間の視覚や脳と活字の中に潜んでいる不思議な「錯覚の世界」を紹介することにした。
まずは新井夫妻の作品群をじっくり鑑賞してみよう。
1、2列目は右下がり、3、4列目は左下がり
図1は「東大一高」の文字列である。
これも平行なのだが、やはり左右に傾いているように見える。文字列の1、2列目は右下がりに傾き、3、4列目は左下がりに傾いている(1、2列目と3、4列目の文字列は逆向き)。
まるで、ビー玉などをジグザグに落として遊ぶ玩具のレールのような形状だ。後は同じパターンの繰り返しである。
でも画面に定規などを当てて確認してみると、文字列は紛れもなく平行線なのだ。
なんとも不思議な現象である。