アート&レビュー

名優、高倉健さんをしのぶ

映画俳優、デコボコの道 俳優 高倉健

2012/5/18

日本映画を代表する俳優、高倉健さんが亡くなりました。主演した映画「あなたへ」が公開された2012年、日経電子版に連載した「高倉健のダイレクトメッセージ」では誠実な人柄が伝わり、読者からも多くの反響が寄せられました。当時の連載を再掲し、高倉健さんの優しさ、芯の強さを改めて伝えます。
「あなたへ」をやって良かったと想えた理由の一つが、大滝さんの演技を目の前で見せてもらえたことだ(撮影:今津勝幸)

「最後の仕事だと思って私はやります! 健さん!」

力強くおっしゃっていた大滝秀治さんが、6月の舞台を降板されるというニュースが、残念でなりません。大滝さんは漂泊放浪の俳人、種田山頭火を演じるはずだったこの舞台に、並々ならぬ情熱を燃やしていらしたに違いないでしょう。

8月に公開される「あなたへ」を撮り終えたとき(ああ、この映画をやって良かった)と心の底から想(おも)えた理由の一つは、大滝秀治さんの演技を目の前で見せてもらえたことでした。

「久しぶりに、きれいな海ば見た」

大滝さんのこの短い台詞(せりふ)を、台本で読んだときは平凡すぎると感じていました。ところが、大滝さんがこれを発したとき、心の目をパッチリと見開かされたのです。脚本家は、すごい台詞を周到に書き込んでいました。そこに名優の魂が込められると、作品のテーマともいうべき重さと深さをもった言葉に生まれ変わる。

気迫とは、大きな声やアクションで伝わるものではないことを、改めて思い知りました。

「あなたへ」の撮影現場で((C)「あなたへ」製作委員会)

■笠智衆さんが打ち込んでくれた「気迫の杭」

胸に気迫の杭(くい)を打ち込んでくださった先輩といえば、故・笠智衆さんもそのお一人です。

1982年の「海峡」で、私の父親役を演じてくださった笠さんとご一緒した岡山ロケの帰り道での出来事を、今も忘れることができません。

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