日経日本画大賞展意表突く色彩と題材 日本画の枠はみ出す

2012/5/19

第5回東山魁夷記念日経日本画大賞展が19日、東京・上野公園の上野の森美術館で始まる。入選した55歳以下の30作家が力量と美意識、アイデアを競っている。日本画の常識を乗り越えた作品が数多く並び、日本の絵画とは何かを改めて考える場ともなっている。

「これが日本画なの」。過去4回の日経日本画大賞展ではそういう声がよく聞こえてきた。

油彩画のように濃厚な絵や抽象絵画に似た作品など、1970年代ごろまで通用した日本画のイメージからはかけ離れた作品が多かったからだ。古くからある題材を選んだ絵でさえ、旧来の日本画とは味わいがどこか違っていた。

多種多様の作品が出品されるのは今回も変わりがない。入選作からいくつか選び、視点を変えながら見ていこう。

大賞 鴻池朋子「シラ―谷の者 野の者」(右、2009年、182×1632センチ、襖、ダブルラック蔵)
大賞 鴻池朋子「シラ―谷の者 野の者」(中央、2009年、182×1632センチ、襖、ダブルラック蔵)
大賞 鴻池朋子「シラ―谷の者 野の者」(左、2009年、182×1632センチ、襖、ダブルラック蔵)

古来の花と鳥、山水、美人の絵などを期待するとみごとに裏切られる。例えば、最年少で入選した谷保玲奈の「出るために見る夢1」。タコやキノコを生々しい筆致で描き、骨と化した魚まで登場させている。日本画の常識からはほど遠い題材を選んでいるが、夢と現実感が交わる今風の面白みが伝わってくる。森山知己「海中図」は、浮世絵のタコ図や琳派の波図など江戸時代の絵を思い出させる作品で、近代以前の絵から日本画を再考している。

大賞を受賞した鴻池朋子「シラ―谷の者 野の者」は、どくろが異例なばかりか、オオカミもチョウも人間の脚をもち、意表を突かれる。同じく大賞の濱田樹里「流・転・生1」には花が描かれているが、色彩の流れにのみ込まれ、溶け込んでいる。そうした題材によって、鴻池は日本人の原点にさかのぼる絵を模索し、濱田は幼時を過ごしたインドネシアでの体験から生命の根元に触れようとする。

大賞 濱田樹里「流・転・生[1]」(2009年、200×1120センチ、パネル、平塚市美術館蔵)

日本画といえばにかわで溶く顔料で描いた掛け軸や屏風、襖(ふすま)と相場がほぼ決まっていたが、次第に額装が主流となり、今ではパネルをそのまま展示するのも珍しくない。画材も岩絵の具や金銀のほか、アルミ箔や石こう、プラスチックなども併用され、立体の作品やアニメーションを駆使する作家もいる。淺井裕介「泥絵・素足の大地」は、陶器や園芸などに使う様々な土で描いた作品。原始時代の洞窟壁画を見るようでもある。