なぜ独身寮が見直されているのか

企業の独身寮がじわりと復活している。共同生活を通じコミュニケーション能力を磨いたり、社内人脈を広げたり。リアルな交流が必要とされる寮生活を通して、若手社員の対話力と発想力を豊かにするとともに、社内の組織力を強化したい企業の思惑が背景にある。
約20平方メートルのワンルームマンションタイプの個室(横浜市のJFEエンジニアリング東神奈川寮)

JFEエンジニアリングは2011年秋、横浜市内に同社初の独身寮「東神奈川寮」を新設した。10階建て(全192室)で、うち2つのフロアは女性用。部屋にはバス・トイレのほかに簡単なIHキッチンと畳表のベッド、ドラム式洗濯機が付いている。

部署が違う人と情報交換

入寮者は入社3年前後の若手社員が中心で、社員同士の交流も盛ん。ロジスティクス事業部の松尾智弘さん(26)は寮完成を機に引っ越してきた。仕事帰りに寮の仲間と一緒になることも多く、「部署が違う者同士で話すといろんな情報が集まり、会社の全体像がつかめる」。

エネルギープラント事業部の小野美代子さん(26)は休日、寮の仲間とゴルフの打ちっ放しや温泉に出かける。「バラバラに住んでいたらあり得なかった体験をできるのが寮の魅力。部署が違う先輩には愚痴もこぼせる」と明かす。

三井物産も、1990年代半ば以降廃止してきた独身寮を2006年春に復活させた。「寮を廃止したことで、自分の部署以外の人と対話できる若手が減り、社内ネットワークが脆弱になった」(同社)反省に基づく。現在、東京都内に女子寮1棟、男子寮5棟を一括で借り上げ、総合職の新入社員ら若手計約500人が住む。

学生時代に一人暮らしだったアロマ・ポリエステル原料事業部の丹下きさらさん(25)は「共同生活、しかも女性だけの世界には当初、抵抗があった」と振り返る。そんな丹下さんも入寮3年目には寮長として、女子寮や独身寮全体でのイベントなどを切り盛り。「その過程で培った社内の人脈やマネジメント経験が多少なりとも仕事に生きている」と話す。

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