極細ちぢれ麺の釜石ラーメン(新華園本店)

鶏出しの和風スープに極細ちぢれ麺。脂身の少ないチャーシュー、メンマ、ネギだけのシンプルなラーメンだが、食べ飽きがしないほっとする味である。

店は以前の場所にあった。真新しいドアを開けると店内はなにもかもが一新されている。

ラーメンと半チャーハンのセットを注文した。ラーメンは被災前と何も変わっていなかった。食べ終わって経営者の西条優度(まさのぶ)さんと再会した。

店は1階が泥水に襲われた。厨房設備も全滅。ようやくオープンしたのは昨年12月1日のことだった。年に何回かしか食べない高級な料理と違って、ラーメンは日常の食べ物。それだけに消えるとどうしても食べたくなる。地元客は再開を待ち望んでいた。

「地域に根ざしたものですから、地元のお客さんの舌に染み込んでるんです」

とはいえ改装費がかさんだに違いない。私は値段のことが気になっていた。

「ラーメンは以前と同じ500円ですが、ほかのメニューは全部値下げしました。890円だったチャーシューメンを720円で出していますし、エビトマト(エビチリ)も2人前1940円を1人前860円にしています」

「値下げですか」

「お客さんは被災者です。値上げなんかしていいはずがありません。震災でお世話になった皆さんへの恩返しの意味もあります。迷わず値下げしました」

地域とともに生きてきた店は、どんなときも地域とともになければいけない。口にはしなかったが西条さんがそう考えていることは間違いない。西条さんは別れ際にこう言った。

「元の釜石に戻るだけではダメです。元以上の釜石にしないと」

うなずき合いながら私たちは握手をした。

(特別編集委員 野瀬泰申)

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