「ここです」

木村さんが車を止めて指さす方向を見た。そこには駅舎があった。東名(とうな)駅という。津波に襲われたこの辺りの仙石線は不通になったまま。赤茶けた線路は雑草に覆われようとしている。

仙石線野蒜駅。架線が垂れたまま

その先の野蒜(のびる)駅も無残な姿をさらしていた。こちらは無人駅ではなく観光情報センターを兼ねた2階建てになっている。しかし内部は破壊の跡をそのままに残していた。

「石巻では見てほしいものがあるんです」と木村さんが言う。そして連れて行ってくれたのが旧北上川を挟んで石ノ森萬画館の対岸にある工事現場だった。

「仮称ですけど石巻リバーサイド・マルシェというものを造っています。街中のこの場所はもともと地元の百貨店があった所です。ここに鮮魚店や食堂が入る建物を造ります。浜焼きスペースがあって、店で買った魚や貝をその場で焼いて食べられるようにしようと思っています。ステージも用意しますよ」

プレハブを並べた屋台村というのではなく、もっと本格的な飲食を中心とした施設である。場所もいい。きっとにぎわうことであろう。

マルシェの建設現場

その少し先にブティックビルがある。空き店舗を使って地元の様々なものを売っている。施設の名前は「AKT46」。「オールジャパン絆タウン」の頭文字である。46は47都道府県のうち地元宮城県を除く46都道府県とつながろうという願いを込めた数字。

中に入ると本物の大漁旗で作ったシャツや腕に巻く「ミサンガ」、三陸沖のワカメ、味噌など日持ちがする商品が並んでいた。

それにしても一体どんな人が買っていくのか。

「被災地観光がはやっているんです。石巻にも多い日は1日10台ほどの観光バスが来ます。最初は嫌だったんですが、いまはそれもありかなと。

観光客は被災地に何かをしたいという気持ちを持っています。大手の旅行会社は事前に『石巻の焼きそばを50人前用意できる店はありませんか』などと問い合わせてきます。飛び込みのリクエストもあります。そういう需要があるんです。

ですから目的は何であれ、石巻に外から来た人が買いたくなるものをそろえた場があれば、地域が少しは潤うと思うんです」

注目記事
次のページ
14日目(3月23日)