働き方・学び方

定年世代 奮闘記

包丁ひやひや初体験「体と頭フル回転」 定年男子の料理教室

2012/4/7

料理は一切したことがなかった。台所は女性の城だから、領域を侵すのは良くないと勝手に決めていた。

慣れぬ料理に真剣に取り組む(東京・吉祥寺)

ところが定年退職し、家にいる時間が増えるとそうはいかない。ゴロゴロしているだけでは妻の機嫌を損ねるし、旅行や実家の親の世話などで妻が家を空けると、とたんに困ってしまう。冷蔵庫のビールを取り出す以外、台所とは縁がなかったから、何がどこにあるのかも分からない。外食続きは飽きてしまうし、第一、財布が持たない。思い切って、ベターホーム協会が開く「お料理はじめての会・男性クラス」の体験教室に参加してみた。

■幼稚園児を諭すような講師の声

教室には定員いっぱいの30人近くが集まっていた。60歳前後の定年退職または予定者が大半を占める。エプロン、三角巾を着けた年配男性の神妙な顔が並び、「一度も料理をしたことのない人は」という女性講師の質問に、半分ほどがおずおずと手を挙げた。

「まずは手洗い。指の間もしっかりと」。幼稚園児を諭すような講師の優しい言葉で教室の雰囲気が和んだ後、コメの研ぎ方、包丁の扱い方などから授業が始まった。「右足を後ろに引いて、右手の包丁がまな板に直角に向くように」「流しに包丁を置かない。食器のかげになり危ないですよ」といった初歩の心得を説かれ、「なるほど」とうなずく生徒が多い。

今日の成果を携帯に保存(東京・吉祥寺)

この日はハンバーグを作った。ひき肉にネギのみじん切り、パン粉、牛乳、卵など加え、粘りが出るまでよく混ぜ合わせる。さらに形を整えたものを、手から手に打ち付けて空気を抜く。「落としてしまいそう」「洋食屋の本物のコックさんになった気分」などと、いい年をして大いに盛り上がった。

あとはフライパンで火を通し、竹串を刺して焼け具合を確かめる。透明の肉汁が出るようになったところででき上がりだ。額に汗がにじむほどの慌ただしさだったが、何とか完成した。

ひとしきり、初作品を携帯カメラに収めるシャッター音が響き、ようやく試食となった。

久しぶりに体と頭をフル回転させて、腹が空いたせいもあるのだろう。外見の悪さは別として、おいしさは予想以上だった。「これなら自分にもできる」。大げさに言えば、初めての大仕事を何とかやり終えた達成感をも感じるほどだ。

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