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「魚へん+◎」で何と読む? 創作漢字の奥深さ

2012/4/3

「魚へんに春」と書いてサワラ。ほかに鰯、鯰、鮭、鰹、鮪など魚へんの漢字はたくさんありますが、「魚へんに◎」で何と読むかご存じですか? 漢字のようで漢字でもなさそうな「魚◎」という字は存在するのでしょうか。

■正解は「ちくわ」

正解は「魚の目」でも「ウロコ」でもありません。「ちくわ」と読むそうです。なるほどと膝を打つ人も多いかもしれません。魚が二重丸=ちくわ。「切り口が輪の形になった魚」という冗談のようなこの字について調べてみることにしました。

漢字を調べるなら、まずは漢和辞典ですが、魚へんの分類の中に「◎」なんてありません。惜しいことに「魚へんに回」という淡水魚はいるらしいのですが、横道にそれます。次にインターネットで検索してみることにしましょう。しかし文字が入力できません。「魚」と「◎」に分解して入力すると「ちくわ」に関連することが検索結果に出てきます。

読み方が何とか「ちくわ」らしいということが分かったので、普通の辞書に載らない漢字表現を収録した「当て字・当て読み漢字表現辞典」(三省堂)を引いてみました。そこには「落語家の書いた本に出てきた造字(国字)」とあり、出典に2008年刊行の「パソコンは日本語をどう変えたか」(講談社)が挙げられていました。同書では、パソコンでこれが漢字かというため息が聞こえそうな『魚◎』でも今昔文字鏡というソフトを使えば表示できると取り上げています。やはり「ちくわ」と読み、落語からの出典となっていました。

切り口を見れば「魚◎」でも納得がいく?

■落語家の遊びから

もっとほかに情報はないのか。「読めない漢字」「魚へん漢字」といった書名があれば目を凝らし、魚市場やちくわ製造会社に尋ねたりもしましたが、全く手掛かりはつかめません。そこで、当て字辞典の編者である笹原宏之・早稲田大教授と今昔文字鏡を編集する文字鏡研究会に「魚◎」の詳しい出典を尋ねてみました。

両者から紹介されたのが1997年刊行の「蜀山人狂歌ばなし」(三一書房)で、この著者が落語家であり蜀山人(大田南畝)の研究者でもある春風亭栄枝さん。「魚◎」を創作したのは栄枝さんなのか、取材しました。

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