何かのきっかけでそのことが好きになり、以来、ずっとそれが好きでありつづけ、今日もまたその何かのために出かける。それが本来の偉大なるアマチュアである。アマチュアとはアマトール。本来の意味は何ものかを「愛するひと」。
科学を支えているのは科学者だけではない
科学を支えているのは、実は科学者だけではない。新しい昆虫を最初に見つけるのも、不思議な化石を偶然掘り出すのも、不意に夜空の底に現れる彗星(すいせい)を真っ先にとらえるのも、象牙の塔にこもった職業的な科学者によるものではない。森の中に分け入り、泥だらけ、擦り傷だらけになりながらも、木のうろの中を掘り返した誰かの手によるものだ。毎週毎週、自転車をこいで川沿いの崖に通い、地層と地層のあいだを、目を皿のようにして調べた誰かの手によるものだ。いてつくような冬の夜、寝袋にくるまって、それでも空を見つめ続けた誰かの手によるものだ。
たとえば日本最大の甲虫ヤンバルテナガコガネは、1980年代になって沖縄北部で発見された。それはハブのひそむ山中に果敢にいどんだアマチュア昆虫採集家、水沼さんの執念によるところが大きい。
福島県阿武隈川沿いで見つかった巨大な首長竜フタバスズキリュウのほぼ完全な化石は、中学生の頃からあたりを調べまわっていた鈴木さんの手によって掘り当てられた。
肉眼でも見えるほど輝き、華麗な尾を引いて天空に現れた池谷・関彗星や近年の百武彗星は、その名のとおり、日本人のコメットハンターの手によって発見され、世界中にその名を知られることになった彗星である。