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 文部科学省は来年度から、博士課程に進む大学院生には修士論文を不要とする制度改正を実施する。大学院の早い段階から研究テーマを絞り込むのを防ぎ、広い視野を持つ人材を育てるのが狙いで、論文の代わりに筆記試験を課す。
 修士論文は不要なのか。改革によって博士の就職難は解決するのか。改革案をとりまとめた中央教育審議会大学院部会の有信睦弘部会長(東京大学監事、64)、近年の大学院改革を鋭く批判した著書『高学歴ワーキングプア』などで知られる水月昭道氏(44)、現役の大学院生で社会学者の古市憲寿氏(27)にそれぞれ尋ねた。

有信氏「研究室の外でも通用する知見必要」

東京大学(東京都文京区)

東京大学(東京都文京区)

今回の制度改正では、博士課程に進む大学院生に対し、修士論文の代わりに「博士課程研究基礎力試験(Qualifying Examination、QE)」を課す。QEでは専攻分野のみならず関連分野の専門的知識を筆記試験などで評価する。なぜ修士論文は不要なのか。有信氏は「必ずしも論文が悪いわけではないが、論文だけだと視野が狭くなるケースが出てくる」と説明する。

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「多くの大学院では入学時点で学生が専攻する専門分野や研究室が決まっており、早い段階で学生の研究テーマが絞り込まれている。そこから論文に向かっていくと、狭い興味に縛られた人材となりかねない」

「確かに論文執筆の際も、幅広い知識が求められることがある。教員の論文指導がしっかりしている研究室だと、論文だけで十分効果が上げられるだろう。しかし、現状は必ずしもそうではない。ほとんど学生任せで指導が行き届かないケースは多い」

「特に理系、中でも遺伝子などライフサイエンスの分野では、極めて狭い分野に特化した研究が行われている。これは国の方針で莫大な研究費を投入してきたことが影響している。こうした研究室では、学生は教授の研究のための研究を行うことが多い。しかしその研究は他の分野に応用が利かず、研究室の外ではあまり役に立たない。就職できるとしてもせいぜい創薬業界くらいだ」

「本来は国が研究施設を作って人材を吸収すべきだと思うが、できていないのが現状だ。彼らのような人材がもっと幅広い知識を習得し、研究室の外でも力を発揮できるようにする。それが今回の改革の狙いだ」

「QEの導入は強制ではなく、手を挙げた大学院でまず実施していく。当面は理系が中心となるだろう。細かい仕組みはそれぞれの大学で決めていくことになる。QEの導入を契機に、修士課程においてより幅広い知識を習得できるようなカリキュラムへと変わっていけば、修士号を得て就職していく人材の底上げにもつながると期待している」

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