
悪性リンパ腫は、英国の研究者ホジキンにちなんで「ホジキンリンパ腫」と、それ以外の「非ホジキンリンパ腫」の大きく2つに分けており、「非ホジキン」が9割を占める。
2010年7月から11年3月に非ホジキンの「手術なし」の症例数が436例と全国で2番目に多かった神戸市立医療センター中央市民病院(神戸市)。免疫血液内科の石川隆之部長は「兵庫県は人口に対する血液内科の数が少なく、患者が集中する傾向にある」と説明する。
非ホジキンの中で最も多く、3割程度を占めるのが「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫」。標準的な治療法は、生物学的製剤「リツキサン」のほか、ステロイド剤と3種類の抗がん剤を3週間ごとに計6~8回投与する方法で、「R―CHOP(アール・チョップ)療法」と呼ばれる。
リツキサンは01年に承認。がん細胞表面のたんぱく質と結合すると、体内の免疫反応が強く起こり、マクロファージという細胞ががん細胞を攻撃する。石川部長は「リツキサンの承認で治療成績は大きく向上した」という。
ただ通常の抗がん剤も併用するため、副作用のリスクがある。同病院は「高齢患者では再発と副作用の両方を起こしにくくするぎりぎりの範囲で抗がん剤の量を調整する」。悪性リンパ腫の1割を占めるホジキンについても4種類の抗がん剤を2週間おきに12~16回繰り返す標準的な化学療法を採用しているが、患者の体力などに応じて投与の量を減らしている。
昨年7月に移転した新病院では通院で抗がん剤治療が受けられるベッド数を33床と8床増やした。R―CHOP療法を外来で受ける患者は3割弱から8~9割となり、入院患者は大幅に減少。「外来中心の治療体制でさらに医療の質を高めていきたい」と同部長。
同病院のように、今回の調査の対象にならない通院での抗がん剤治療を受ける患者も増えている。ただ「高齢者は通院治療が厳しいこともある」と指摘するのは、非ホジキンの「手術なし」の症例数が370例と3番目に多い国立病院機構「熊本医療センター」(熊本市)の河野文夫副院長(血液内科)だ。
24時間体制で救急患者を受け入れ、専門の血液内科医も常時対応するため開業医とのネットワークも強く、患者を紹介されることが多い。2年半前に建てた新病棟では通院で抗がん剤治療できる設備を拡充したが、高齢者は安心できる入院治療を希望することが多い。河野副院長は「今回の調査で非ホジキンの症例数が多い病院は、こうした高齢患者が多い病院ではないか」とみる。
抗がん剤や放射線の標準的治療で再発の可能性が高い場合は、より大量の抗がん剤投与や放射線治療を行うが、血液をつくる造血幹細胞も破壊されるため骨髄移植や臍帯(さいたい)血移植を併用する。特に他人の造血幹細胞を移植する同種移植は熊本県内で同センターが唯一実施。他施設から患者も引き受け、「連携を強化している」(日高道弘・内科医長)という。
悪性リンパ腫は、リンパ節の多い首やわきの下などに痛みを伴わないしこりができることが多く、(1)発熱(2)体重の減少(3)大量の寝汗――の全身症状を重視する。

▼診療実績 厚生労働省が11年に公開した10年7~11年3月の症例数(退院患者数)とした。病名や手術方式で医療費を定額とするDPC制度を導入・準備中の全国1648病院が対象(一般病床の約5割)で、病名と手術の有無で症例数を比べた。がんでは、国立がん研究センターが11年に公開した院内がん登録全国集計(08年分)も参考にした。
▼過程 財団法人「日本医療機能評価機構」(東京)が病院の依頼で(1)医療の質や安全確保のための体制(2)患者へのサービスや療養環境(3)運営体制――などを審査した結果を100点満点で換算。審査結果を公開している認定病院は1979病院で全体の約3割。
▼構造 医療従事者の配置、機器や専用治療室など、厚労省が定めた「診療報酬施設基準」を満たしたとして、各病院が届け出た項目を比べた。