大阪松竹座・二月花形歌舞伎染五郎のユーモア爆発、愛之助・獅童と新しい力みせる

2月の大阪松竹座は市川染五郎、片岡愛之助、中村獅童の花形役者が三つどもえで歌舞伎の新たな可能性をみせている。ユーモアのセンスを爆発させる染五郎。それを獅童が迎え撃ち、愛之助が舞台を引き締める――。昼夜全4演目で39歳トリオが絶妙に絡み合った。

「今までやったことのないことをあえてやるアグレッシブな公演」と胸を張る染五郎。その目玉は昼の部「大當(あた)り伏見の富くじ」だ。原作は「鳰(にお)の浮巣」という明治期の上方世話物で、後に「浮かれかご」として松竹新喜劇がリメイクした。十数年前に古い台本を探し出した染五郎が「ぜひ大阪でやりたい」と、肝いりで新作として歌舞伎に先祖返りした。紙屑(かみくず)屋が花魁(おいらん)に入れあげ、身請けの金欲しさに富くじを買うと大当たりする。しかし舞い上がって当たりくじを川に流してしまう間抜けな展開。眼目は喜劇のストーリーに最新のギャグを満載した前代未聞の演出にある。

古典歌舞伎でもセリフに時事ネタを入れて笑いを取ることがあるが、せいぜい1カ所。しかし本作は数分ごとにギャグが飛び出す。歌舞伎や映画の名シーン、ドラマ「古畑任三郎」「家政婦のミタ」の決めゼリフや「笑点」の大喜利、マツケンサンバ、エグザイルやあやまんジャパンのダンスまでネタに取り入れた。うっかりすると見逃しそうなほどだ。

染五郎は夜の部「研辰(とぎたつ)の討たれ」でも存分に客席の笑いを誘う。刀研ぎから武士に出世した守山辰次(染五郎)だが、城中でこびへつらう町人気質をからかわれたのに腹を立て、家老を切り殺して逃亡。愛之助と獅童が演じる家老の息子兄弟によるあだ討ち道中が始まる。

野田秀樹演出版でない「研辰」は19年ぶり。大詰めで兄弟に捕らえられた辰次の演技が圧巻だ。寺の前に座り込んで、のらりくらりと減らず口。やっと立ち上がったかと思うと腰が抜けてまた座り込んでしまう。くどいまでに必死の言い逃れを重ねる様相が笑いの渦を二重三重に呼ぶ。一時は関西移住を考えたこともあるという染五郎だけあって、丁寧に客のツボを突いていく。

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