ライフコラム

ことばオンライン

「ごぼう抜き」「山の神」…言葉で見る箱根駅伝

2012/1/2

正月の風物詩であり最大のスポーツイベントである東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)。総距離217.9キロを各大学10人のランナーが1本の「たすき」でつなぎます。毎年数々のドラマを生んできた箱根駅伝を「言葉」でつないでみました。

88回目を迎えた大会は2012年1月2日午前8時、東京・大手町の読売新聞東京本社(建て替え中)前から一斉にスタートします。出場権を獲得した19大学と、予選落ちした大学から優秀選手を選抜した「関東学連選抜」を合わせ20チームが優勝を争います。

■「ごぼう抜き」記録20人

各校のエース級が出場する「花の2区」(鶴見―戸塚)では、駅伝の醍醐味である「ごぼう抜き」が例年見られます。前年の87回大会では、村沢明伸選手(東海大)が最下位から17人抜きした快走を見せ、最優秀選手賞「金栗杯」を獲得しました。最多記録は85回大会で日大の留学生、ギタウ・ダニエル選手がつくった20人抜き(記念大会で23チーム参加)になります。

余談になりますが、ごぼう抜きは「ゴボウを引き抜くように、棒状のものを一気に引き抜くこと」(明鏡国語辞典第2版)の意味でしたが、近年は意味が広がり、「競走などで、数人を一気に追い抜くこと」(同)のように使われることが一般に多くなりました。辞書によっては「本来は誤用」としているものもあります。

■「山の神」は2代目

東洋大の柏原選手は2代目「山の神」(2011年、共同)

標高差864メートルを一気に駆け上がる5区(小田原―箱根芦ノ湖)は通称「山上り」といわれる難コース。81回大会で11人抜きの記録を作った今井正人選手(順大)が3年連続で区間最高記録を出し、「山の神」と呼ばれました。記憶に新しいのは85回大会から3年連続区間賞で東洋大の往路3連覇の原動力になった柏原竜二選手で、その力強い走りから「新・山の神」と呼ばれています。最後の箱根路で4年連続区間賞を達成し、新たな伝説を作るかもしれません。

ちなみに日本経済新聞では箱根駅伝のこの区間を、登山と区別するため「山登り」とはせずに「山上り」と表記することにしています。

レースも終盤になると上位と下位の差が開き、先頭から20分以上遅れたチームは交通規制の関係などで「繰り上げスタート」になります。繰り上げになると、各選手がつないだ母校の「たすき」ではなく、関東学生陸上競技連盟が用意したたすきを使用しなければなりません。前回は9区と10区をつなぐ鶴見中継所で、上武大が残り10秒でたすきをつなぎましたが、日大だけが出場チームで唯一つなげず、無念の繰り上げスタートとなりました。

■白熱する「シード権」争い

前回は早大と東洋大が激しく競り合い、21秒の僅差で早大が総合優勝しましたが、この優勝争いと同様に目が離せないのが「シード権」争い。総合10位内に入れば翌年の予選が免除されるため、これを目標にしているチームも多くあります。

前回は8~11位を4校がゴール寸前まで争う白熱した展開となりました。ゴールまで残り約150メートルで国学院大の寺田夏生選手がコースを間違えるハプニングがありましたが、国学院大はかろうじて10位に滑り込み初のシード権を獲得、城西大はわずか3秒差で涙をのみました。

701年に大宝令で定められた「駅制・伝馬制」から名付けられた「駅伝」。かつて運んだ手紙などの荷物を「たすき」に替え、母校の名誉を「掛けて」選手がリレーします。今回はいったいどんな名勝負が見られるでしょうか。

(内藤康宏)

ライフコラム 新着記事

ALL CHANNEL