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暮らしの知恵

2011/12/15

暮らしの知恵

タートルのすそはタイツの中へ

長光コーチ(左)はマフラー、ダウン2枚、オーバーズボンの完全武装。高橋大輔は話を聞くときは長袖パーカーも着るが、体が温まるとベストのみに

しかし、一番寒い思いをしているのは、コーチたちだ。リンク周りを歩いていれば、気温5度でもそう寒くはないが、選手と違って動く機会は少ないし、練習中はずっと氷上だ。高橋選手を指導する長光歌子コーチは完全武装だった。

上半身は肌に近い方から、タートル2枚、フリース、薄手のダウンジャケット、大きなダウンジャケット(腰まで隠れるもの)にマフラーと手袋。そして下半身は、タイツにズボンにオーバーズボンにレッグウオーマー。海外の氷点下になるリンクでは、さらにカイロを腰にはりつける。そんなに寒くない日は、薄手のダウンとレッグウオーマーは省く。「タートルのすそはタイツの中に入れ、肌の上にもう1枚、肌を作るのがポイント」と話す。

もっとも、長光コーチほど着こむのは、気温8度以下の場所でジーッとしているケース。東京なら、サッカーやラグビーなどの屋外でのスポーツ観戦か、初詣に行く場合だろう。

寒風吹きすさぶサッカー場から氷点下の雪山まで取材した自分の経験を振り返っても、「もう一つの肌」作戦をしないと、上にどれだけ着ても効果は半減だった。逆に「もう一つの肌」を応用して、薄手の発熱下着を薄いタイツにインしてズボンをはけば、東京の普段の生活では冷えなかった。かなり寒い日は、太ももまであるガードルもはけばバッチリ。10代のころはナマ足で頑張っていたという安藤選手も、「今はジーンズの下にタイツ。レギンスも2枚ばきです」。

選手の知恵、専門家もお墨付き

この日の安藤美姫は長袖シャツを着用しているので手袋はなし。ショートパンツでおしゃれにおなか周りをガード(2010年2月、バンクーバー)

そういう安藤選手は上半身は意外に薄着。最高気温12度のある日、薄手のコートの下はシャツと薄い革ジャン。多くのスケーターも薄着で、屋内外の寒暖差はマフラーや帽子の小物で調整。北欧や北米でも室内は暑いくらいなので、下は薄手の発熱素材のインナーに普通のセーターで十分。「寒い地域では、薄手のダウンと普通のダウンの2枚着るのが一番温かい。セーターでモコモコにはしない」(太田さん)

生活者ならぬ、競技者の知恵。科学的にも正しいのだろうか?

「見事に理にかなっています」と、目黒西口クリニックの南雲久美子院長。冷え性や自律神経失調症などを専門とする内科医で漢方医だ。「脱ぎ着ができるタマネギ状に着るのが一番いい」。気温に応じて、衣類をカスタマイズできる状態にしておくのがいい。

南雲さんによると、本来「冷え性」というのは、生まれつききゃしゃな冷え体質をいう。こういう人はそもそも体が冷えるようなことはしない。今、「冷え性」と名乗る人の多くは、体質的な「冷え性」ではない。夏の冷房や運動不足などで、冷えが蓄積されている人が大半だ。寒いので着こむ→汗をかく→汗は蒸発するときに熱を奪う→さらに冷えが悪化、という悪循環。寒いのに汗が止まらない「冷えのぼせ」の人もいる。運動選手でも緊張で手のひら、足の裏、脇に汗をかき、部分的に冷え性になる人もいるほど。太田さんの「汗をかかない」防寒は正しい。

金妍児は長袖シャツを最初は着るが(左)、すぐにタンクトップ姿に。タンクトップ姿が多い金妍児は必ずといっていいほど、手袋をしている
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