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 日本の若者が「内向き」になっている――。最近、こうした議論をよく耳にするようになった。海外の大学への留学者が減っていることや、企業内で海外赴任を希望する人材が減っていることなどがその理由とされる。本当にそうなのか? 元外交官で国際交流基金顧問の小倉和夫氏(73)、数多くの留学生を送り出してきたフルブライト・ジャパン事務局長のデビッド・サターホワイト氏(59)、ネット社会や若者文化に詳しい関西学院大学准教授(理論社会学)の鈴木謙介氏(35)に聞いた。

海外志向の低下、若者の責任か

「変わったのは若者ではなく日本社会」サターホワイト氏

各企業の合同説明会に臨む学生たち。留学は就職に不利との声も(1日午前、東京都新宿区)

各企業の合同説明会に臨む学生たち。留学は就職に不利との声も(1日午前、東京都新宿区)

「日本の若者が内向きだから留学が減った、というのは違う。若者の『外に出たい』という意欲は変わっていない。変わったのは社会構造だ」。日本在籍が通算41年に及ぶフルブライト・ジャパン(日米教育委員会)事務局長のデビッド・サターホワイト氏は、留学生の減少についてこう強調する。

文部科学省によると、2008年の留学者数は6万6833人と、前年に比べ11%減った。米国際教育研究所(IIE)がまとめたデータでは、2010~11学年度に米国の大学・大学院に在籍した日本人留学生は2万1290人と、前年度より14%少なく、ピークだった1997年からは半分以下に落ち込んだ。

 97年には米国に滞在する留学生で最も多いのが日本人だった。2010~11年度はこれが7位にまで落ちた。1位は中国人で約15万8000人、2位がインド人の約10万4000人、3位は韓国人で約7万3000人だ。2万人強の日本人は大きく水をあけられている。

「米国への留学が減った理由は1つではない」とサターホワイト氏は分析する。大きな要因の1つが、経済問題だ。「ここ数年、米国の大学は急ピッチで学費を上げている。授業料や部屋代、食費など留学中の9カ月間にかかる諸費用の平均は、2011~12年度が公立の4年制大学で3万3973ドル。3年前に比べて16%も上がっている。家計が悪化するなかで、これは痛い」。

日本の企業の姿勢と国内環境の変化も学生が「留学すると不利になる」「留学する必要がない」と考える一因だとサターホワイト氏は指摘する。

「企業の採用活動が前倒しになっていることで、留学が就活に悪影響を与えると考える学生が増えた。グローバル化といいつつも、実際には海外での経験を採用時にあまり重視しない企業が多いこともマイナスだ。ようやく今年から就活解禁日が2カ月遅くなったが、それでもまだ早い」

「一方で大学が英語の授業を取り入れたり外国人の教授を採用したり留学生を受け入れたりと国際化を進めたため、わざわざ留学しなくても国際的な雰囲気が味わえるようになったことも影響している」

さらには少子化で学生の数が減ったことで、落ち込みが大きくなった側面もある、と話す。留学者数は減ったが若者人口はそれ以上のペースで減っており、18~29歳の人口と留学生の数から算出した留学率は過去最高水準、との試算もある。「若者が自己主張が苦手なのは今に始まったことではない。留学者数が減ったから内向きだと若者の責任にするのではなく、社会の問題ととらえて議論すべきだ」と訴える。

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