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若者不在の若者論、20代が反論 「絶望の国の幸福な若者たち」の著者、古市憲寿氏に聞く

2011/11/11

10月26日付の日本経済新聞電子版で「日本の若者はなぜ立ち上がらないのか」という記事を掲載したところ、大きな反響があった。若者の動向に詳しい4人の識者の意見に対して賛同の声が寄せられる一方で、20代や30代などからは反発もあった。そこで『絶望の国の幸福な若者たち』などの著書で注目されている20代の社会学者、古市憲寿氏(26)に、当事者として4氏の意見と読者の声についてどう感じるか、聞いてみた。

■「若者」って誰? 「一億総若者社会」では…

前回の記事では内田樹・神戸女学院大学名誉教授(61)、城繁幸・ジョーズ・ラボ代表(38)、原田泰・大和総研顧問(61)、山田昌弘・中央大学教授(53)に意見を聞きました。記事を読んで率直な感想は。
1985年生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒。東京大学大学院総合文化研究科博士課程在籍。専攻は社会学。

「僕は以前、ニューヨーク・タイムズの東京支局長から同じ質問を受けたことがあります。日本の中でも同じような疑問を持つ人がいるでしょう。でもよく考えてみると、『若者』って誰なんでしょうか? 若者という言葉は、空疎なわりには人をわかったような気にさせるマジックワードです。誰しも若者であった経験があるから、言いたいことが言える。でも同じ若い人でもサラリーマンと学生とフリーターとでは立場が違う。年齢だけでひとくくりにするのは無理があります」

「各種調査などを見ていくと、世代間の意識差はかつてなく縮まっています。20代も30代も40代も、あるいは70代だって意識は若い。『一億総若者社会』とでもいえる世の中になっています」

「もちろん『若者』という言葉や世代論が全く無意味だとは思いません。今でも世代ごとの意識差はあるし、おかれた境遇の違いはある。しかしそれをむやみやたらと抽象論に接続させてしまうことには注意が必要だと思います。もちろん自戒を込めて」

「ところで、そもそもなぜ『若者』だけが立ち上がらないといけないのか。社会に文句があるなら、文句のある人が立ち上がればいいじゃないですか。『若者』だけが社会に怒りを向ける変革の主体である、という想定には無理がある気がします。僕の実感でいえば『中年』のほうがよっぽど怒りっぽいんですけど」

■20代の生活満足度、過去40年で最も高い

「若者が立ち上がらないのは、不満がないから。将来を考えれば不安はあるが、今は楽しい。これが大方の若者の本音ではないか」(山田昌弘氏)
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「その通りだと思います。内閣府の『国民生活に関する世論調査』によると、2010年時点で20代男子の65.9%、20代女子の75.2%が現在の生活に満足していると答えています。同じ調査で40代は58.2%、50代は55.3%まで満足度が減る。時代をさかのぼって1960年代後半には20代の満足度は60%程度、1970年代の20代だと50%程度にすぎない。過去40年間で最高に満足度が高いという結果が、他の調査などでも明らかになっています」

「一方で内閣府の調査では、『悩みや不安がある』と答えた20代は1980年代後半に40%を切っていたのが、2010年には63.1%になっている。生活に満足しているものの不安を抱えている、という20代の心理が浮かび上がってきます」

「この現象を説明するのが、社会学者の大沢真幸氏の説です。大沢氏によると、人は『将来はより幸せになれるだろう』と考えたとき、現在の生活に満足できないと感じる。一方で自分はこれ以上幸せになるとは思えないとき、今の生活に満足する。将来に希望を持てないからこそ、今に幸せを感じるという現象が起きているのではないでしょうか」

「もちろんだからといって若者みんなが幸せでよかったね、という話ではありません。たとえば過酷な労働環境で働きながら、それを誰のせいにもできずに自分で抱え込んでしまう『優しい』若者がいる。本当につらい人はデモをする余裕さえもないんです」

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