地下に琵琶湖級の「水がめ」
太郎 でも、歴史とお酒、なぜどちらとも伏見なんでしょう。
部長 いいところに気がついたな。実は伏見という地名は江戸時代、「伏水」とも表記されていたんだ。昔から水が豊かで、17世紀には酒造業が盛んになっていたというぞ。
京子 日本酒に必要な上質の水を供給してきたのが、京都の地下にある水がめね。
太郎 地下? 水がめ?
京子 「京都水盆」と呼ばれているんですが、その量は211億トンともいわれているわ。大きさも東西12キロ、南北33キロでまさに琵琶湖級。伏見は京都の北部と比べて土地が低くなっているから、水が湧(わ)きやすくなっているの。
部長 伏見に湧く水は、京都の地下を大きく対流してから上がっているんだな。雨として降ってから湧き上がってくるまで、実に100年を要するというぞ。
太郎 えっ、ということは1世紀前の水を飲んでいるということですか。
部長 古来、水に恵まれた地域には大きな都市が発展する。伏見城が完成した16世紀末の伏見の人口は約6万人との説がある。当時の人口規模だと江戸、大坂、京都に次ぐ4番目の大きさだったらしい。
太郎 全国4位の大都市ですか。こうして日本酒をいただけるのも、歴史を探訪できるもの、ひとえに水がめのおかげなんですね。
(京都支社・重田俊介)
次回は11月24日に公開します。