「もうひとつの京都」伏見 酒と竜馬と水の謎京都ここだけの話(9)

京都、といっても存外広いもの。行政上は京都市伏見区と呼ばれるあたりは、「伏見と京都は違う」という人もいるほど、独特の魅力があふれるエリアです。

【登場人物】
東太郎(あずま・たろう、30) 中堅記者。千葉県出身。人生初の「関東脱出」で京都支社に転勤し半年。取材時もオフの日も突撃精神で挑むが、時に空回りも。朝晩めっきり寒くなり、冬用の布団を出してきた。
竹屋町京子(たけやまち・きょうこ、25) 支社の最若手記者。地元出身、女性ならではの視線から、転勤族の「知識の穴」を埋める。キュートな腹巻きを物色中。
岩石巌(がんせき・いわお、50) 支社編集部門の部長。立場上、地元関係者との交遊も広く、支社で一番の「京都通」を自認する。札幌支社の勤務経験もあるが、かの地と京都では「寒さの質が違う」という。(登場人物はフィクションです)

酒の肴(さかな)は弾痕

大河ドラマ効果でにぎわいをみせる寺田屋

東太郎 さっき街中を歩いていたら、在原業平邸という石碑を見つけました。1200年前の貴族ですよね。京都で「先の大戦」といえば第2次世界大戦でなくて応仁の乱だ、という話はよく聞きますが、なるほど昔の人にまつわる碑があちこちにあるなんて、毎回びっくりします。

竹屋町京子 地元出身の私でも歩いていると発見の連続で、新鮮な驚きがあって面白いですよね。でも、年間5000万人といわれる観光客の多くが訪れるのが京都駅より北側。隠れ歴女の私に言わせれば、南に位置する伏見は穴場なんですよ。「京都に行ったけど、人ごみがひどくて疲れただけ」なんてことはまずないわ。

寺田屋近くに新設された竜馬とおりょうの像

岩石部長 伏見という街は、豊臣秀吉が築城した伏見城の城下町だったこともあるし、幕末の鳥羽・伏見の戦いの戦場となったこともある。歴史のなかで幾たびも重要な舞台となってきたんだ。坂本竜馬が襲撃された寺田屋事件で有名な寺田屋も伏見にある。一度焼失して再建されたものらしいが、当時の雰囲気が感じられるぞ。

京子 寺田屋といえば、昨年はNHKの大河ドラマ効果もあって大いににぎわいましたね。寺田屋近くの川辺には今年9月、竜馬とおりょうの像が新設されたの。寺田屋自体も入場料(大人400円)を払えば見学できるわ。

部長 歴史ある街には食もある。2011年版のミシュランガイドには伏見区から2店の料理屋が選ばれた。2つ星を獲得した日本料理店の魚三楼は、幕末に起きた鳥羽伏見の戦いによる弾痕が駒寄の格子に残っていることで有名だ。弾痕を酒のさかなにできるなんて、そうそうお目にかかれないぞ。

鳥羽・伏見の戦いで薩摩の本営となった御香宮神社

京子 近鉄の桃山御陵前駅近くにある御香宮神社は、鳥羽伏見の戦いで薩摩藩の本営として使われたことで知られるわよ。神社近くのマンションにも、伏見奉行所があったことを示す記念碑が建ってます。

太郎 私のようなアウトドア好きには、宇治川の派流を走る観光船がおすすめですね。伏見は江戸時代、大阪・天満を結ぶ三十石船や京都二条を結ぶ高瀬舟の拠点として栄えたんです。船から見上げる街の姿は格別ですよ。