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歴史博士

心癒やす石仏の笑み 当尾(京都府木津川市) 古きを歩けば(9)

2011/11/15

秋風に誘われて山道を行くと、柿の実の明るいオレンジ色が目に優しく、コスモスやススキがそよいでいる。そんな道のそこここで石仏が迎えてくれる。奈良県境に近い京都府木津川市の「当尾(とうの)」地区は、石仏や石塔の里として知られる。

絶好のハイキングコース

「わらい仏」は口をかすかに開けているようで笑って見える(京都府木津川市)

同地区には約3キロ四方に40カ所近く、石仏や石塔、石碑などの石造物が点在する。多くは鎌倉期に刻まれたものだ。紅葉の季節には格好のハイキングコースで、浄瑠璃寺と岩船寺を結ぶコースは40分ほどで歩ける。岩船寺からたどる方が、道は下り坂で年配者などには歩きやすい。半面、浄瑠璃寺からたどる方が石仏などを見逃すことは少ないという。

道の分岐点にたたずむ「阿弥陀如来・地蔵菩薩(ぼさつ)磨崖仏」は、1つの岩の違う面に2つの像が彫られている。その横には線彫りの灯籠があり、火袋部分には実際に灯明がそなえられる。大門地区の「大門石像群」は、付近の寺跡などに散在していた石仏や石塔を住民が安置しなおした。岩船寺近くの大岩に刻まれた「不動明王立像」は厳しい相貌ながら、一心に祈れば願い事を1つだけかなえてくれるとされ供物が絶えない。

人気は「わらい仏」

岩船寺近くの大きな岩に刻まれた「不動明王立像」。一つだけ一心に願えば願い事をかなえてくれるとされている

当尾の石仏群の中でも人気が高いのは、岩船寺の近くにある「わらい仏」と呼ばれる阿弥陀三尊像だ。口をかすかに開いているようで、笑って見える。前にたたずむとこちらも肩の力が抜け、思わず口元がゆるむ。如来には本来表情はないとされ、光の加減などにもよるのだろうが、訪れる人は口々に「やっぱり笑ってる」と話し、笑顔になる。

わらい仏は中央に阿弥陀如来が、右側に観音菩薩、左側に勢至菩薩が座している。住民組織「当尾を守る会」会長を務める浄瑠璃寺住職、佐伯快勝さんが「観音菩薩は慈悲の仏で、ハスの花の形の台に往生した人の魂を入れます。勢至菩薩は知恵や力の象徴です」と教えてくれた。「昔、古道を歩いてきた人々はこの像と向き合い、自分が知に走っているのか情に傾いているのか、そのバランスを見つめたのではないでしょうか」


付近の寺跡などにあった石仏、石塔を住民が安置しなおした「大門石像群」
ハイカーに人気の「わらい仏」

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