実は屈指の「おでんタウン」、カニならメス狙い出張グルメの達人・金沢編

「出張グルメ」北陸シリーズの2回目は金沢。全国的にはあまり知られていないローカルフードが登場する。

入門編~個性競う「金沢おでん」~

旬の素材を熱いうちに食べる(手前から時計回りに車麩、バイ貝、ロールキャベツ、大根、つみれ、ふき)

加賀百万石の城下町、金沢は有数の美食都市だ。全国に知られた料亭やすし店など値の張る店はいくつも挙がるが、裏返せば“B級グルメ不毛の地”ともいえる。安くて手軽に地域色豊かな食事をいただける場所はないのか――。そんな出張者におすすめなのが「金沢おでん」だ。

電話帳でおでん専門店を検索すると金沢市内に65店あり、人口比では6800人あたり1店の割合だ。全国おでんサミットを開催した松江市の8800人、静岡市の1万2000人を上回る。東京都23区は3万7000人に1店だから、ずいぶん多い。おでん店を名乗っていなくても夏場以外は定番メニューにしている居酒屋もたくさんある。

独特の具材に注目

金沢でおでんが広まったのは戦前。早い店は昭和10年(1935年)ごろから営業しているが、何でも藩政時代から説き起こす土地柄だから、さほど昔のことではない。市内30店舗が加入する「金沢おでん嗜み会」代表の綿谷和明さん(45)によると金沢おでんの特徴は車麩(くるまふ)や、「ふかし」と呼ぶ練り物など固有の具材。関東で一般的なはんぺんやちくわぶなどは見かけない。だしは店によって濃いめも薄めもあり個性を競う。

左党も下戸も、常連も旅行者も集まる(「黒百合」店内)

気軽に入れる1店がJR金沢駅の百番街にある「黒百合」(くろゆり、金沢市木ノ新保1-1)。せわしなく人が行き交う駅構内1階という立地ながら、くつろげる店だ。やや雑然とした入り口をくぐると長いカウンター。隅で年配の常連客が昼間から酒杯を重ねながら店員と世間話に興じている。そのわきでは大きな荷物を抱えながらあわただしく注文する旅行者もいて、不思議な空気が漂う。

開店は1953年。駅前の地下街で営業していた当初は国鉄職員や通勤帰りに立ち寄る客でにぎわった。91年に現在地に移ってから観光客が増えたという。86歳の今も店に出る和田外志夫会長、辰巳社長(58)、純店長(34)と親子孫の3代で切り盛りする。