アート&レビュー

舞台・演劇

劇団四季「オペラ座の怪人」 原曲の魔力引き出す大山大輔の危険な陶酔感

2011/11/7

この作品が日本のミュージカルを変えた。あらためて、そう感じ入ったのはファントム(怪人)を演じる大山大輔がもたらす危険な陶酔感ゆえだった。

パリのオペラ座地下に住む怪人が歌姫クリスティーヌに恋をし、破れる。フランスの作家ガストン・ルルーの小説を原作にしたアンドリュー・ロイド=ウェバー作曲のミュージカルが輝きを失わず、みるたびに観客をくらくらさせる力の源は何より音楽だ。

かつてウェバーの楽曲は通俗的という意味合いで、プッチーニ的などと陰口をきかれたこともある。だが、耳に心地よい「通俗的」な響きをきわめることで、かえって崇高な瞬間を生みだす、そんな魔力がこの作曲家にはある。そうであればこそプッチーニ的なのだ。今回、本格のバリトン歌手である大山大輔が、ウェバーの音楽がもっている通俗性と崇高さという両義性をみごとに歌い表したことに新鮮な驚きを覚えたのである。日本にミュージカルのロングランを定着させたのは、やはり音楽それ自体の劇性だった。

むろん、ことし上半期の読売演劇大賞候補(作品賞)にノミネートされた東宝の「レ・ミゼラブル」(ロンドン初演版)も忘れてはいけない。日本初演は「レ・ミゼラブル」が1987年、「オペラ座の怪人」がその翌年であり、80年代後半に公演を開始した2作がその後の日本のミュージカルに決定的影響を及ぼしたことは疑いない。ちなみに「レ・ミゼラブル」では「蝶々夫人」のハミングコーラスそっくりの旋律が流れる。これらメガ・ミュージカルはオペラ史になぞらえれば、前衛オペラの進展と対極に位置する、もうひとつの流れ、メロディアスなプッチーニの系譜を継ぐものと記述されてもいい。

アート&レビュー 新着記事

ALL CHANNEL