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言葉の誤用にどう対応? 市販・国語辞書を徹底比較

2011/11/1

 書店には数多くの国語辞典が並んでいます。皆さんは購入する際、どんな基準で辞書を選んでいますか。収録語数、価格などいろいろあると思いますが、編集方針で選ぶのもいいかもしれません。言葉の誤用を各辞典がどう扱っているか比較し、辞書の性格や違いを見ていきましょう。
あなたはどの辞書を選びますか(東京都千代田区の三省堂書店神保町本店)

 文化庁が9月15日に発表した「国語に関する世論調査」で取り上げた「情けは人のためならず」「雨模様」「姑息(こそく)」「すべからく」「号泣する」の5語。本来の意味(正用)と本来とは違う意味(誤用・慣用)を並べて、どちらを使うか尋ねたところ、誤用が広がっている実態が浮き彫りになり話題となりました。この5語について、市販されている主な国語辞典21種が誤用にどう対応しているか調べ、辞書の個性を探りました。

■違いが鮮明に

国語辞典21種の比較調査
辞典名出版社発行年情け雨模様姑息すべからく号泣
旺文社国語辞典10旺文社2005
講談社国語辞典3講談社2004
日本語大辞典(中)2講談社1995
角川必携国語辞典11角川2010
岩波国語辞典7岩波書店2009
広辞苑(中)6岩波書店2008
ベネッセ新修国語辞典ベネッセ2006
新明解国語辞典6三省堂2005
日本国語大辞典(大)2小学館2000
新潮現代国語辞典2新潮社2000
集英社国語辞典2集英社2000
三省堂現代新国語辞典4三省堂2011
新選国語辞典9小学館2011
学研現代新国語辞典4学研2008
小学館日本語新辞典小学館2005
大辞泉(中)増補・新装小学館1998
現代国語例解辞典4小学館2006
大辞林(中)3三省堂2006
例解新国語辞典7三省堂2006
明鏡国語辞典2大修館2010
三省堂国語辞典6三省堂2008

※辞典名の後の(大)は大型辞典、(中)は中型辞典、その他は小型辞典を表す

 表を見てください。正用の語義のみ掲載している辞書に○、正用のほか誤用や慣用に触れている辞書には◎を入れ、○の多い順に上から並べてみました。「正しい意味しか載せない」規範性の強い辞書から、広く誤用表現を取り入れた辞書まで順に一覧できるようになっています。この表から規範性が強いといえるのが、誤用には一切触れていない旺文社国語辞典など3種。それに○が4つの角川必携国語辞典など8種が続きます。逆に言葉の変化を積極的に取り入れているのが◎が5つの三省堂国語辞典と明鏡国語辞典、4つの例解新国語辞典の3種になります。そのほか7種は中間派と考えていいでしょう。わずか5語の調査ですが、その違いがはっきりと見えてきました。

 辞書を言葉の規範と考えれば誤用を載せないことはひとつの見識であると思います。一方で言葉の使用実態に合わせ誤用から慣用への変化を記述することも辞書の大事な役割です。どちらに比重を置くかが各辞典の編集方針であり、その違いが表のような結果に表れているといえます。

 国語辞書研究室を主宰する倉島節尚・大正大名誉教授は「多くの辞書は新しい慣用に対して基本方針を決めると、改訂してもなかなか態度を変えない。その慣用が一般化し定着の度を強めると、取り上げる辞書の数はゆっくりと増える」と指摘します。その典型といえるのが広辞苑で、規範性を守りつつ「情けは人のためならず」の誤用について最新の6版から触れるようになりました。

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