東宝「ピアフ」真実に迫ろうとする大竹しのぶの格闘

ラストの30分、演技が結晶のような美しさを放つ。女優、大竹しのぶの幕切れの絶唱「水に流して」を聴くだけでも劇場に出かけた甲斐(かい)のある音楽劇だ。失恋や薬物中毒で身をぼろぼろにし、臨終のときを迎える不世出のシャンソン歌手エディット・ピアフ。その真実に迫ろうとする大竹の格闘そのものが感動を呼ぶ舞台である。

ピアフといっても、若い世代はすでにピンとこないかもしれない。1915年、伝説によればパリの路上で生まれた(実際は母親が警官に病院に運ばれた)。父は大道芸人、母は歌手で、売春宿だった父方の祖父母の家に預けられる。失明の危機にさらされるが、娼婦たちが教会で祈り、奇跡的に回復。15歳ごろから街の通りで歌い、お金を集めて暮らし始める。

ここからが舞台の時間。高級クラブの支配人ルイ・ルプレに見いだされたと思ったら、彼は殺され、ピアフにも嫌疑がかかる。けれど詩人レイモン・アッソの導きで成功。戦後まもなくボクサーのマルセル・セルダンと熱愛関係になり、有名な「愛の讃歌」を創唱するが、彼を飛行機事故で失い、ショック状態に。以降、シャルル・アズナブール、ジルベール・ベコーらを世に送り、ジョルジュ・ムスタキから作品提供を受け、シャンソンの支柱に。生涯の親友マレーネ・ディートリッヒの支えもあったが、自動車事故の苦痛や孤独から麻薬中毒となり、アルコール依存も進んで、ステージで倒れるようになる。年若いギリシャ人美容師テオ・サラポとの最後の結婚ののち、衰弱死する。享年47。

舞台はピアフがステージで倒れる場面からフラッシュバック(逆戻り)して、路上歌手の時代へ。前半が大成するまで、後半が薬物中毒と転落の季節。休憩を含め2時間50分の長丁場、前半は筋を追うのに忙しく、見どころ、聴きどころは後半に。

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