「NASA流」極限訓練で学んだこと若田光一 JAXA宇宙飛行士

米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行室では、リーダーシップや集団行動を学ぶ特殊な訓練があります。そのなかには冬山や海底など過酷な環境で行う訓練があり、総じて「探検隊行動規範訓練」と呼んでいます。

過酷な環境でリーダーシップ学ぶ

宇宙は極限環境です。真空に近い状態で放射線が飛び交い、船外構造物の表面温度の昼夜の差は約250度もある。机上でシミュレーションするとき、臨場感が持てないこともあるほどです。人間というのは面白いもので、机上や普段の環境ではいくら冷静に考え、行動できていても、身体的・精神的に厳しい環境に置かれると本性が出てきて、行動がいつもと違ってくることがある。操作を間違えると死に至る可能性もあるほど厳しい環境にある宇宙ステーションの中でチームとして仕事をしていくためには、心理的かつ身体的なストレスの高い環境下でミッションを遂行するという訓練も重要です。それが探検隊行動規範訓練です。

登山では、突然天候が変わるなど思いがけないリスクがあります。場所によっては熊に襲われるかもしれません。そんな環境に身を置くことで、初めて本当のリーダーシップやチームワーク、自己管理が習得できるとNASAでは考えているのです。

チームは数人で構成します。例えば冬山の場合、10日間ほどの日程の中で、ある地点まで到達して帰ってくることをミッションとします。リーダーは毎日変わるのがルールです。あるときはリーダー、あるときはフォロワーとなることで、両方の立場のあり方を学ぶのです。実際の宇宙飛行中も、状況によって立場が変わります。例えば普段は部下である人も、その人が担当する実験ではリーダー的な役割が求められますから。

高熱の中、迫られた判断

「無重力環境訓練施設」のプールで訓練を行う若田さん(2010年12月、米ジョンソン宇宙センター、NASA提供)

何度か行った訓練の中で、特に思い出深いのは10年前の夏山登山です。2001年8月、私は米ワイオミング州で行われた訓練に参加しました。富士山より高い4000メートル級の山の頂上を目指すのです。日程は9日間。7人の宇宙飛行士でチームを組み、食料や燃料、テント、寝袋などが詰まった30キロのリュックを担いで終日歩きました。

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