金融史に詳しい東京海上アセットマネジメント投信(東京都千代田区)の平山賢一さん(44)は「通貨の価値が下がると、人々の目は金に向かいます」と話す。欧米諸国の借金が増えたり、経済成長が鈍くなったりして、米ドルやユーロの価値が維持できるのかとの恐れが昨年から広がっている。各国の中央銀行など公的部門は保有する金を21年間減らしてきたが、昨年は一転して買い増した。

ただ、金は持っていても配当も利子も付かず、株などが上昇すると魅力は急速に薄れる。1990年代の後半はずっと安かった。

「金の値打ちがどのぐらいと問われれば、時代や他の資産の状況で異なるとしか答えられません。これまでの高値は行き過ぎだった懸念もあります」。一橋大の北村さんがまとめた。株式市場に比べ金市場は数百分の1の規模。ちょっとまとまった資金で乱高下する。「最近までもてはやされたけど、急落したものね」

報告を聞いた所長は夫人の円子に提案した。「今からでも金の指輪を売ろうか」。円子は首を振った。「お金には換えられないわ。あなたとの思い出がつまっているもの」(榎本敦)

<ケイザイのりくつ> 揺らぐ米ドル、通貨裏付けは難しく

金は万人から価値を認められ、古代から通貨の役割を果たしてきた。近代以降も、紙幣と一定量の金を交換する「金本位制度」で、金は通貨の価値を裏付けた。第2次大戦後、通貨制度の根幹だった米ドルは金との交換を認めていたが、米国は1971年に突如交換を停止。金本位制は終わった。

米ドルなど主要通貨の下落に歯止めをかけるため、金を通貨として見直そうとの声も出始めている。ただ、世界経済は急拡大し、米ドル札の流通量は71年の約20倍に膨らんでいる。生産量がそれほど増えない金が通貨の裏付けとなるのは困難だ。

[日経プラスワン2011年10月1日付]

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