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映画セレクション

2011/10/1

映画セレクション

主演の森山未来 (C)2011映画「モテキ」製作委員会

ニュースサイトのライターとなった幸世に、4人の美女が次々と言い寄る。雑誌編集者みゆき(長澤まさみ)、みゆきの親友のOLるみ子(麻生久美子)、ガールズバーの愛(仲里依紗)、クールな先輩社員の素子(真木よう子)。あり得ない話なのだろうが、それがあり得ると思わせるのが、ミュージカル喜劇のすごいところだ。映像と音楽のノリでその気にさせてしまう。そういう力がこの映画にはある。

そもそも恋愛というのは幻想にすぎない。戦争であるとか、身分の違いであるとか、家と家との因縁であるとかで、愛し合っているのに引き裂かれる悲恋というのがほとんど成立しない現代の日本では、シリアスになればなるほど白けてしまう。だったら、それはもう、お祭りみたいなものとして、なんだかわけがわからないけど、モテてモテて仕方がないという話の方が、かえって今日的なリアリティーがある。

もちろん、そんなハチャメチャなドラマは、主人公の造形に説得力がなければ成立しない。瀬川昌治のミュージカル映画やクレージーキャッツの喜劇映画には、時代を体現するキャラクターが登場した。鹿児島の養鶏場で働く歌好きの4人組がプロを目指して東京に出てくる(「乾杯!ごきげん野郎」)とか、社員の幸福には責任をとらない会社組織で徹底的に無責任で調子のいいサラリーマンが出世を重ねていく(「ニッポン無責任時代」)とか。直球であれ、変化球であれ、そこには1960年代初頭の高度経済成長の光と影が、シリアスな社会派作品に劣らず、明確に刻まれていた。

ひるがえって、幸世という若者のキャラクターは実にありありと現代を体現している。対人スキルに欠けるオタクと呼ばれ、年上のバブル世代より確実に貧しく、既存の社会になかなか受け入れられない。そういう疎外された人間だからこそ、爆発的にはじけるパワーがあるのだ。

残念なのは後半に入って、ありきたりの泥沼の恋愛劇に陥ってしまうこと。いかにもウェットなドラマになってしまって、前半のスピード感がガクンと失速する。最後まで突っ走ってほしかったと思うのは、こちらの感覚が古すぎるのであろうか。

大根仁監督。1時間58分。(編集委員 古賀重樹)

東京・新宿バルト9ほかで公開中。

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