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エンディングノート

死にゆく父との共同作業

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NIKKEI STYLE

大手化学メーカーの営業マンとして日本の高度経済成長を支えてきた父親が、67歳で退職。さあ、これから第2の人生だと張り切っていた矢先に、末期がんが発覚する。現役時代「段取り命」の仕事人間だった父親が、人生の最後に取り組んだのが、自らの死の段取りをつけること。そして、家族に残す覚書「エンディングノート」を作ることであった。

そんな父親、砂田知昭氏の姿を、次女の砂田麻美監督が追ったドキュメンタリーである。1978年生まれの砂田監督は是枝裕和監督の助手を務めてきた人で、これが初監督作品である。

不治の病に侵され、死にゆく肉親を見つめる。テーマだけを聞けば、いかにも暗い、湿っぽい作品と思えるかもしれない。ところがこの映画はすこぶる明るく、軽快に展開する。

映画は、父親の死を迎える「段取り」を、トゥ・ドゥ・リストに置き換え、11章構成とした。父親はやるべき11のことを淡々と、そして精力的にこなしていくのである。

まずは神父を訪ねる。クリスチャンではないけれど、心安らかに死にたいからだ。葬儀が簡素なのも気に入った。郷里の老母に洗礼の了解を取り付けるべく、最後の家族旅行をする。旅先の志摩でアワビのステーキを一緒に食べる。孫たちを米国から呼び寄せて、気合を入れて遊ぶ。死んだあとに知らせるべき人のリストを作成し、会社を通して発表するニュースリリースの文案まで書く。それを長男に詳細に引き継ぐ……。

がん告知から死までの半年の間の、父親の意志的な行動に沿って、映画は進んでいく。その父親の意志がぶれずに最後までたどり着いていることが、映画の芯になっている。

もちろん、肉体の衰えは隠せない。カメラはそれを赤裸々に映し出す。だが、精神は最後までくじけない。少なくとも、くじけていないように見える。家族をはじめ周囲の人々も、父親を哀れむことなく、死を迎える準備につきあっている。短期間にテキパキと事を進めていく父親に、遅れないようについていっている。

カメラを抱えた次女も、家族の一員として、他の家族と同じ位置にいる。がんの悲惨さや治療の辛さをことさらに強調して涙を誘うことはしない。かといって、1人のがん患者として冷徹に突き放してしまっているわけでもない。

やるべき段取りを1つひとつこなす父親に寄り添い、家族の一員としてその共同作業に参加している、というスタンスだ。砂田監督は子供のころから家族の中で「ビデオカメラ係」だったという。その役割をそのまま続けている感じだ。

いわば映画のメーキングフィルムの趣とでもいおうか。メーキング班はその映画のスタッフの一員でありながら、少しだけ引いた位置にいて、映画作りのプロセスや監督の表情などを冷静に眺め、そこにドラマを発見していく。

肉親の死を撮る、というのは1990年代の日本で盛んに作られた「私的ドキュメンタリー」と呼ばれる一連の作品群にありがちなモチーフである。ところが「エンディングノート」はそれらの作品とはまるで肌合いが異なる。私的ドキュメンタリーの視線が最終的に「私」に行きつくのに対し、砂田監督の視線は最後まで父親の生きざまに向いている。監督自身がナレーションを担当しているのだが、私小説的な傾きはない。

そこにこの作品の新しさがある。清潔さといってもよいだろう。自分の立ち位置がはっきりしていて、そこを動かないという点では父も娘も似ているのかもしれない。

泣かせる演出を慎重に避けた映画であるが、試写室で涙を流す人が少なからずいたことを付け加えておく。1時間29分。(古賀重樹)

東京・新宿ピカデリーほかで10月1日公開。

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