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一見さんお断り、突破するには… 京都ここだけの話(3)

2011/8/18

 京都の飲食店を語るとき、耳にするのが「一見(いちげん)さんお断り」。人を寄せ付けない、冷たい印象を持つ人が多いようですが……。

【登場人物】

 東太郎(あずま・たろう、30) 中堅記者。千葉県出身。人生初の「関東脱出」で京都支社に転勤し半年。取材時もオフの日も突撃精神で挑むが、時に空回りも。ガイドブックなど「京都本」の所蔵が50冊を超えた。

 竹屋町京子(たけやまち・きょうこ、25) 支社の最若手記者。地元出身、女性ならではの視線から、転勤族の「知識の穴」を埋める。夜の鴨川ランニングを始めて3カ月。あまりの暑さに、この2週間は滞りがち。

 岩石巌(がんせき・いわお、50) 支社編集部門の部長。立場上、地元関係者との交遊も広く、支社で一番の「京都通」を自認する。芸妓(げいこ)さんにもらった名前入りうちわは、使えないまま壁に飾ってある。(登場人物はフィクションです)



■大臣でもお断り

祇園の花見小路通から1本入ると、一見さんお断りのお店が立ち並ぶ

 東太郎 大変です、特ダネです!

 岩石部長 なんだなんだ、1面ネタか?

 太郎 一見さんお断りの店に入る術を聞いてきました。

 竹屋町京子 また花街(かがい)で油を売ってたんですか? 一見さんお断りって、文字通り初めての客は入れないよってことですよね。

 部長 その通り。かの小泉純一郎元首相がまだ厚生相だったとき、一見さんお断りで有名なある料理店を訪ねたが入れずじまいだった、という話は祇園では有名だぞ。

 京子 でも、そこは京都。店内にお酒のボトルを並べておいて「今日は予約で一杯なんです」とやんわり伝えたそうです。

 部長 入れなかった店もすごいけど、小泉氏もすごい。その日は「総理大臣になったら入れてくれ」と言い残して去ったんだ。半ばジョークと受け取られていたが、見事首相の座を勝ち取って2005年に来店した。名目はノーベル化学賞を受賞した島津製作所の田中耕一フェローとの会食だったが、郵政民営化に対する執念に似たようなものを感じたな。

 京子 小泉さんだけじゃないわ。パナソニック創業者の松下幸之助氏やライブドア社長だった堀江貴文氏、それに外国の首脳まで入れなかったそうです。

 部長 札束を持って行ってもダメだった、なんて話も聞くな。

 太郎 どうしてそこまでかたくななんでしょう。顧客拡大のチャンスをみすみす逃してませんか?

 部長 理解するには、まず京都独特の決済の仕組みを知らないといけない。実は今でも、クレジットカードを使えない飲食店がかなりある。店で現金で支払いを済ませてもいいが、後から請求書を送ってもらうケースが多いんだ。

 太郎 私も聞いたことがあります。花街を支えていた昔の旦那(だんな)衆は、財布を持ち歩かずに遊び歩いたって。

 京子 京都ではクレジットカード会社がつくる信用よりも、お客様それぞれの顔の信用を重視する、ってわけですね。

 部長 そこで大事なのが飲食した客が何らかのトラブルで支払ってくれなかったときのリスク対策だ。誰かに紹介してもらった人であれば、店はその紹介元に請求すればいい。カードがない時代からこうした知恵で経営を安定させていたわけだな。

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