山下達郎が語る 震災で揺れた新アルバム誕生の舞台裏「Ray Of Hope」 全曲にコメント

2011/8/17

クローズアップ

シンガー・ソングライターの山下達郎さん

シンガー・ソングライターの山下達郎さんが通算22作目、6年ぶりとなるアルバム「Ray Of Hope」を発表した。3月11日に起こった東日本大震災の影響で、「今までの作品と比べても、特別な内容になった」。異例の経験となった創作過程を振り返り、収録曲を解説してもらった。

タイトルは「WooHoo(ウーフー)」の予定だったが、震災を受けて変更。収録曲の中の「希望という名の光」を核に据え、タイトルにもした。「6月に発売して、8月からライブハウスを回るツアーを予定していたんです。でも、先の見通しが立たずご破算に。3月は録音スタジオの電力供給が安定せず、楽器がちゃんと動作しなかったのも痛かった」



(1)【希望という名の光(Prelude)】

3曲目「希望という名の光」から抜粋したアカペラ(無伴奏)の多重コーラスで始まる。「コンセプトアルバムにしたかったので、最初に前奏、最後に後奏を入れました。ビヨンセとか、最近のR&B(リズム&ブルース)は曲ごとにプロデューサーやアレンジャーが変わるので、統一感を出すため、こういう構成にすることが多い」

(2)【NEVER GROW OLD】

決して古びない、という意味だ。「昔からこの英語の響きが好きだった。16ビートで、高校生のころから聴いていたアイリッシュ民謡のニュアンスを混ぜてみた」

(3)【希望という名の光】

「Ray Of Hope」 フェンダー・テレキャスターなど、愛用楽器をジャケットに使った

ナインティナインの岡村隆史が主演した映画「てぃだかんかん」の主題歌で、昨年4月に発売された。初めの曲をボツにして書き直した。「映画のエンドタイトルの途中で海面から海中にカメラが切り替わる。すると世界が全く変わり最初の曲はふさわしくない。だから、プロデューサーに頼んで書き直したんです」

世界で初めて人工で養殖サンゴの移植と産卵に成功した映画の主人公を念頭に書いた。震災後、ラジオ局に多くのリクエストが寄せられた。「映画の主人公への応援歌であり、同時にリーマン・ショック以降、不況の中で苦しんでいる40~50代への応援歌でもあった。僕の聴き手の中心はその世代なので。歌はいったん世に出ると、集合意識の中で、新しい意味が加わることがある。その典型ですね」

(4)【街物語】

東京・人形町を舞台にしたテレビドラマ「新参者」の主題歌。「人形町の狭い路地裏は僕が育った昭和30年代の東京の原風景に重なる。作曲は文学というより絵画に近いと思う。空や街の空気に触発された」

4、5曲目は女性ジャズトランペッターの市原ひかりを起用した。「僕はスタジオミュージシャンじゃなくて、ジャズクラブでソロを吹いている奏者を使う。70年ごろは僕も新宿の『ヴィレッジ・ゲイト』とか、ジャズ喫茶に良く通った。(前衛サックス奏者の)阿部薫も聴いた。ジャズの中で一番好きなのがフリージャズで、レコードならアルバート・アイラーの『マイ・ネーム・イズ・アルバート・アイラー』。フュージョンは嫌いなんです」

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