さらに、体臭についての解説を続ける。
ワキガ臭はアポクリン汗腺からの分泌物によって発生するが、主に次の3要素から成り立っている。硫黄臭、スパイシー臭、脂肪酸臭――。
それぞれ、一体どんなニオイなのだろうか?
科学的に合成した成分を用意してもらい、実際に自分の鼻でかいでみた。
最初にかいだのが硫黄臭。ふたを開けると、ツンとした独特なニオイが鼻の奥を刺激した。すぐにワキガの主要成分だと分かる。何度もかいでいるうちに、グレープフルーツの苦みのあるニオイにもよく似ていることに気が付いた。
続いてスパイシー臭。これは香辛料のような乾いたニオイ。不思議に懐かしい気持ちになってくる。以前、取材でよく訪れた中東地区のスーク(市場)の風景を思い出した。最後に脂肪酸臭。これは、湿ったまま放置しているぞうきんのようなニオイだ。器械体操などで使い込んだ古いマットのようなニオイとでも言ったらいいだろうか。
以上、こうした3つのニオイが複雑に混じり合ってワキガ臭が出来上がっている。
矢吹さんの研究によると、ワキガ臭は日本人の約2割が持っているそうだ。
ワキガ臭には様々な特徴があることも分かっている。
まず年齢との関係。
アポクリン汗腺は30~50歳代に活発に機能し、ニオイが強まる傾向がある。やがて50歳代を過ぎると、アポクリン汗腺の活動が衰え、急速にニオイが弱まってゆくらしい(図5)。