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マリック作品に栄冠、中堅世代も台頭

カンヌ映画祭リポート2011(14)

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NIKKEI STYLE

実に32年ぶりである。「テレンス・マリック」の名がカンヌの閉会式の会場に響いた。1979年の「天国の日々」は監督賞だったが、寡作の巨匠の5作目「ツリー・オブ・ライフ」は見事にパルムドールを射止めた。

マリックの姿はやはり舞台になかった。プレゼンターのジェーン・フォンダからパルムドールを受け取ったのはプロデューサーのビル・ポーラッド。アン・リー監督「ブロークバック・マウンテン」、ロバート・アルトマン監督「今宵、フィッツジェラルド劇場で」など、野心的にして良質な米国映画を作ってきた人だ。

「今日テリーと話した。監督は興奮していたが、とても謙虚で内気な人間なので、自分がセレブリティな行動をしたり、セレブになったりすることは望んでいない」。ポーラッドは閉会式後の記者会見で、カンヌに現れなかったマリックについてこう語った。

審査員長のロバート・デ・ニーロはマリック作品への授賞理由について「詳細は述べない」としながら、「作品の中にある強さや意思が、最もパルムドールに近いものだと感じた」と答えた。

さすがにカンヌだと思った。コンペ作品の質は高かった。マリックをはじめ、ナンニ・モレッティ、ダルデンヌ兄弟、アキ・カウリスマキ、ラース・フォン・トリアー、ペドロ・アルモドバルと、ビッグネームがずらり並んだが、そのどれもが力作で、彼らの輝かしい作品歴の中でも見劣りがしないものだった。

加えて中堅世代の作品が粒ぞろいだった。デンマークのニコラス・ウィンディング・レフン(40)、イタリアのパオロ・ソレンティーノ(40)、イスラエルのヨセフ・シダー(42)、英国のリン・ラムジー(41)らのことだ。日本の河瀬直美(41)と同世代である。

ウィンディング・レフンの「ドライブ」は監督賞を獲得した。米国で製作したカーアクションだが、これがめっぽう面白い。昼は無口なスタントドライバーで、夜はマフィアの雇われ運転手をしているという主人公が、追跡劇に巻き込まれる。その理不尽さ、暴力のあられもなさ、密室の恐怖……。北野武か、ジョニー・トーか、という感じだ。日本では97年の「プッシャー」しか紹介されていないが、今後大いに活躍しそうな人である。

ヨセフ・シダーの「脚注」は脚本賞。これもちょっと奇怪な力のある作品だった。同じ専門領域の学者で競争相手である父と子の微妙な関係を、ねっちりと描く。父と子の間にも嫉妬(しっと)はある。それは他人同士の場合よりたちが悪い。そんな深層心理を、明快かつ周到な手つきで浮き彫りにしていく。人間がよく描けていて、日本の西川美和みたいな感じがした。

賞は逃したがパオロ・ソレンティーノ「ディス・マスト・ビー・ザ・プレイス」も楽しめた。ダブリンに住む元ロックスターが絶交していた亡き父の影を追って、アメリカ横断の旅に出る。主人公は50歳というのに「ゴス」調ファッションを守り通すというロックスターらしい男で、これをショーン・ペンがややオーバーに演じている。ロードムービーとしてよくできていて、最後はじんとくる。題はトーキングヘッズの曲名である。

さらに、若手も台頭している。この連載ですでに触れたマイウェン(35)の「ポリス」は審査員賞をつかんだ。これはうれしかった。

受賞結果はベテラン、中堅、若手がバランスよく並んだ。ダルデンヌ兄弟とグランプリを分けあったトルコのヌリ・ビルゲ・ジェイラン(52)はすでにカンヌで実績のある監督。「昔々アナトリアで」はさすがに映像の力が際立っていた。

そのせいか、カウリスマキ、モレッティら有力視されていた大物が公式の賞から漏れた。カウリスマキは非公式な賞である国際批評家連盟賞とエキュメニック賞を受けたが、今回もパルムドールには手が届かなかった。

逆に今回のカンヌでサクセスストーリーを成し遂げたのがミシェル・ハザナヴィシウス監督「アーティスト」だった。フランス版007のスパイコメディーにもでていた主演のジャン・デュジャルダンが晴れて男優賞に輝いた。

もう一方のお騒がせ男は、「ヒトラーと共鳴する」などと記者会見で発言して前代未聞の映画祭からの追放処分を受けたラース・フォン・トリアーだ。こちらは受賞しないだろうという予想を裏切って、キルスティン・ダンストが女優賞を獲得した。映画はすばらしく、ダンストも輝いていたので、異論はなかろう。

日本の河瀬直美監督「朱花の月」、三池崇史監督「一命」の2作品は賞を逃した。個性的で高水準の作品がそろったことで、やや埋没してしまった感がある。

確かに河瀬作品に対しては「マリック風にするのはやめろ、という声があちこちで聞こえることに驚かないだろう」(リベラシオン紙)という辛らつな批評もあった。一方で「人間と自然が調和した、過去と現在の間を兆候と情緒と記憶が駆け巡るオード(叙情短詩)で驚くべき壊れやすさを持った作品である」(ル・モンド紙)といった称賛もあった。

カンヌのコンペ初登場の三池には、バイオレンスの作家という先入観が強かったせいか、「一命」の静かなドラマに戸惑いもあったようだ。「家族の貧困によって黒澤やツイ・ハークというより溝口健二や成瀬巳喜男の雰囲気の中に我々を投げ入れる」(ル・モンド紙)という書き方もあった。3Dについては「ハリウッド映画のようなジェットコースター効果を直接追求するのではなく、新しい技術の芸術的可能性の実験を追求するために役立っている」(リベラシオン紙)といった好意的な反応があった。

ともあれ、映画祭は終わった。祭りの撤収はあっという間である。三池は中断していた新作の撮影のために京都へ、河瀬は自作の回顧上映のためにブラジルへと飛んだ。

(編集委員 古賀重樹)=おわり

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