来訪者が減るなどかつての輝きを失いかけていた歴史遺産を再生させようと、地域住民主導の整備が進んでいる。観光名所にとどまらず、地元住民が交流を深めたり、文化芸術の発信拠点になったり。行政頼みと決別し、貴重な歴史的建築物や遺跡が地域住民らの手で街のシンボルによみがえりつつある。
「文化財の活用まで十分に手がまわっていなかった」(独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所の多昭彦研究支援推進部長)
東大寺などとともに世界文化遺産に登録され、2010年開催の平城遷都1300年祭ではメーン会場にもなった平城宮跡。かつてはたばこの吸い殻などゴミが散乱していたという。
見るに見かねて立ち上がったのは観光客に紹介するボランティアの解説員ら。01年に特定非営利活動法人(NPO法人)「平城宮跡サポートネットワーク」を結成した。啓発ポスターはデザイナー経験者が作り、元商社マンは得意の英語で外国人を接客。歌人の柿本人麻呂を題材にしたキャラクターもメンバーの家族が考えた。今春の「平城宮跡クリーン大会」では県外からの参加者を含め約350人が清掃に励んだ。