ブームで出版続々 子ども向け辞書、人気の秘密

総ルビで広がる用途

「辞書引き」がもたらしたもう一つの大きな変化は総ルビ化だ。以前の学習辞典は、辞書の引き方を習う小学校中学年までに学ぶ漢字には基本的に読み仮名が付けられていなかった。「辞書引き」の広がりを受け低学年の児童でも使えるよう総ルビの採用が一気にすすみ、今回の改訂で全社足並みがそろった。

「いまやすべての漢字に振り仮名が付いていることが大前提」(小学館・神永編集長)。文英堂では「時計」を「じけい」と読んだりしても正しい項目にたどりつけるよう、間違えやすい読み方も見出しに立て初学者に配慮している。旺文社は総ルビにしたことで「ひらがなが読めれば就学前の幼児も使えるように作った」と説明、ベネッセコーポレーションには幼稚園児の読者からも感想が届く。

総ルビになったことで、日本語を学ぶ外国人にも利用が広がっている。外国人が日本で生活するのに必要な語彙数は1万語といわれ、収録語数が3万語規模の学習国語辞典であれば十分使用に堪える。国際交流基金で渡航する日本語教師が携行しているといい、偕成社には外国人から「同音異義語を解説したコラムが役に立つ」といった感想が寄せられている。三省堂では学習辞典をベースに「外国人向けの日本語辞典を作る検討をしている」(辞書出版部の武田京編集長)という。

大人にも役立つ内容

新学習指導要領で小学校から英語や古典の授業が始まるのに合わせ、内容も大幅に刷新されている。各社とも百人一首や故事成語など伝統的な日本語文化についての内容を拡充、旺文社で新たに英単語を1000語収録するなど英語学習に力を入れた社もある。

昨年の常用漢字表改定にもそれぞれ対応。新指導要領で学年別漢字配当表以外の漢字も読み仮名を付ければ教科書で使えるようになったため、旺文社や三省堂の学習漢字辞典では全常用漢字に筆順を付け詳しく扱った。学研の漢字辞典は毛筆・硬筆の2つの手本を掲載し、運筆のポイント解説を充実させるなど漢字の書き方が取り上げられているのも学習辞典ならではだ。

言葉の使い分けを説明したコラムや、手話や点字の紹介など大人にも役立つ内容は多い。出版社には「大人にもわかりやすく、子どもの質問に答えるのに役立つ」(くもん出版)、「故事なども取り上げられ大人も勉強になる」(三省堂)といった保護者からの感想のほか、「老眼なので、字が濃くて見やすい」(学研)、「定年退職後に自分のために買った」(小学館)と伝えてきた読者もいるという。

今春以降、来年にかけて改訂予定の出版社もあり、まさに百花繚乱(りょうらん)の小学生向け学習辞典。市場拡大の勢いで内容も素材も進化がすすみ、価格も2000円程度と一般向け辞書よりも手ごろ。小学生に限らず大人から外国人にまで購買層が広がっていく可能性がありそうだ。

(若狭美緒)

▼学習国語辞典 主に小学生から中学生が使うための国語辞典で、歴史は1950~60年代にさかのぼる。教科書の語彙を網羅しており、国語以外の学習にも役立つように編集されている。学習指導要領で辞書を使うのは小学3年生からとなっているが、「辞書引き学習」ブームで低学年からの使用が増えた。最近は教科書に限らない日常生活語やコンピューター関連の新語も押さえ、コラムや図版も充実していく傾向にある。一般の国語辞典に比べ都道府県名など百科事典的な項目が多く載っているのも特徴。