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イオン参入で議論に ゆれる葬祭

2011/2/5

伝統的な葬祭文化が揺れている。寺院からの檀家離れ、高齢化・無縁社会化が進んでいるためだ。葬送の形も多様化、簡素化する中で、葬式不要論のベストセラーが反響を呼んだ。葬儀に対する現代人の意識は大きな転換期を迎えている。

「料金表」の衝撃

葬儀に対する現代人の意識は大きな転換点を迎えている

流通大手イオンの葬祭業参入が伝統的な仏教界に波紋を巻き起こした。イオンは昨年5月、葬儀に僧侶を紹介する「寺院紹介サービス」を全国的に始めた。通夜、葬儀などでの読経と戒名の授与がついた数タイプの料金表を目安として示した。

これが仏教各派で構成する全日本仏教会(全日仏)を刺激した。「8宗派の許可を得ている」との文面があったからだ。全日仏が各宗派の本山に聴取すると、許可の事実はないと確認された。

これを受けて全日仏は6月、イオン側に葬儀をビジネスではなく心の問題としてとらえ、本山の許可を得ているという文言についての謝罪を求めた。また料金表に基づき契約が成立すると、税法上、仏事が請負業とみなされる問題も想定されるとの懸念を伝えた。

イオン側は、料金表を削除するとともに、ホームページ上に、総本山が許可したのではなく、紹介する宗教者は「宗教法人の寺院または宗派(8宗派の総本山)が認めた寺院のみである」として、不適切な表現であったことを認めた。しかし、イオンに続き他の流通企業が葬祭事業への参加を検討する動きもあり、寺院側にとって予断を許さない状況だ。

もう一つの衝撃は、宗教学者の島田裕巳氏が昨年初めに出した著書「葬式は、要らない」がベストセラーとなり、葬儀の問題を議論する機運が一気に盛り上がったことだ。島田氏は、先進国の中でも葬儀に多額な費用を強いている日本の現在の葬儀事情を考察し、葬式仏教化している仏教界の状態に疑問を呈している。

これに対し、一条真也著「葬式は必要!」、橋爪謙一郎著「お父さん、『葬式はいらない』って言わないで」など葬儀の意義を強調する著作物も刊行された。人の死に対し葬儀という「けじめ」が必要であり、遺族のグリーフケア(悲嘆からの回復)も考える必要性を指摘している。

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