遺伝子研究の成果により、その推定ルートが次第に明らかになりつつある。

図5は東京大学の菅野純夫教授、徳永勝士教授らが共同で東アジア、東南アジアの1928人を対象に遺伝子の個人差を解析し、先史時代におけるアジアでの人類の移住ルートを推定したイラストである(アジア10カ国、90人以上の研究者が参加した国際共同研究)。

それによると、アジア人の祖先が南から次第に北方へ分岐し、広がっている様子がうかがえる。

人間の先祖は20万~10万年前にアフリカで出現し、世界各地へ進出した。5万年以上前にインドに到達したアジア人の先祖の一部がタイに渡り、南はインドネシアへ、北は中国などへそれぞれ移住。先住民族と混血しながら集団を形成したというのだ。

「南の集団の方が北の集団よりも遺伝子の多様性に富んでいる。だから、南から北上した遺伝子が現在の東アジアの住民に大きく影響しているようだ」と徳永さん。遺伝的な特徴が似た人たちは使う言語も似ており、日本人は韓国人と最も近い特徴があるという。

前回のコラムで紹介したが、日本人には世界では少数派の乾型(カサカサ)の耳あかや酒に弱い下戸が多い。さらに毛髪の形状でも、東アジア特有の特徴があることが分かったというわけ。遺伝子上はそれぞれまったく別の現象なのだが、突然変異で東アジアに誕生し、人類の移住で広がったプロセスもよく似通っている。

「酒、耳あか、毛髪」は日本人の先祖を探るための重要な手掛かりになっているようだ。