焦がしバターの香り さっくり焼き菓子「フィナンシェ」

●ちなみに…金融街で生まれた菓子

アーモンドの風味と焦がしバターの香りが楽しめるフィナンシェ

「フィナンシェとマドレーヌの違いは?」――。スイーツファンやパティシエにとっては当たり前のことでも、製法や素材、専門用語など、一般の人には難しいことも多いスイーツの世界。あまり詳しくない人だと、冒頭のような疑問を口にすることも少なくないようだ。

焼き菓子の詰め合わせには必ずといっていいほど入っているフィナンシェとマドレーヌ。前者は金塊の形をしていることが多く、後者は貝殻の形をした焼き菓子だが、もちろん形だけの違いではない。使っている素材が異なることが大きな特徴だ。様々なレシピがあるため例外もあるが、一般的な作り方だと、マドレーヌが全卵と溶かしバターを使うの対し、フィナンシェは卵白と焦がしバターを使用。さらにフィナンシェにはアーモンドパウダーが配合されているため、マドレーヌにはない、アーモンドの風味と焦がしバターの香りが楽しめる。

ちなみに、マドレーヌは2010年5月27日更新の「今週の3つ星スイーツ」で特集している。その際は、はちみつがやさしく香るマドレーヌとバターの香りが重厚なマドレーヌに2つ星がついた。

フィナンシェとは、フランス語で金融家や財政家という意味。「お菓子の由来物語」(猫井登著・幻冬舎ルネッサンス)によると、1890年刊行のピエール・ラカン著「フランス菓子覚書」には、証券取引所近くのサン・ドゥニ通りに店を構えていた菓子職人が考案したという記述があり、フィナンシェたちが服を汚さずに素早く食べられるように工夫されたのだという。金の延べ棒を模した長方形の型で焼くことが多いが、今回紹介した動物型のように、最近では様々な型が使われるようになっている。

●記者のひとこと

こだわりの食材が多く使われているスイーツ

「船橋で取れた卵を使っているんですよ」。今回1つ星を取ったクラックランに取材をしていた時のこと。「今週の3つ星スイーツ」で紹介する品は、作り手の技術が優れていることに加え、こだわりの素材を使っているケースも多い。今回もアーモンドパウダーがカリフォルニア産やスペイン産だったり、ほかの回ではチョコやチーズが海外産だったりと、グローバルな回答が返ってくることがよくある。国内でも、有名な産地名を聞くことがほとんどだ。そんな中で「船橋」というローカルな地名。意表をつかれるとともに、ちょっとうれしくなった。というのも、船橋はかつて住んでいた場所だからだ。

ついつい本題から外れて養鶏場の場所を聞くと、慣れ親しんだ施設名が出てきたことにまた驚いた。当時の自宅から自転車で20分ほど、地元では有名なスポーツ施設の近くに養鶏場があるのだという。学生時代にサッカーの試合や体育祭などでよく利用していたが、その近くで極上スイーツの素材となる卵が取れるなんて思いも寄らなかった。当時は「地元愛」などほとんどなかったが、社会に出てからは、地元の人や物事に出会うと何だかうれしくなる。

もう何年もごぶさただが、その施設内のグラウンドで定期的に草サッカーをしている友人もいる。誘いのメールは毎回来るが、欠席ばかり。取材で久しぶりに施設名を聞いたら、何だか懐かしくなってきた。卵のついでにサッカーでもしてこようか。

スイーツの担当をしていると、どうしても体重増加が気になる。「船橋の卵」のおかげで、久々に運動する気にもなってきた。スイーツをきっかけに、健康増進につながるか――。(綱島雄太)


●「日経スイーツ選定委員会」とは

専門委員と日経記者で構成。専門委員は豊富な経験に基づいた通らしい視点で、記者はビジネスパーソンとしての素直な視点で評価。まず、専門委員の意見を参考に書類に基づく第1次審査を実施し、10商品を候補に選定。次に、厳選された10商品を実際に全員で食べ比べ、専門委員の意見を中心に合議制で「3つ星」「2つ星」「1つ星」を決める。

●専門委員の横顔(五十音順)

下園昌江さん

1974年生まれ。大学卒業後、専門学校やパティスリーで製菓の技術や理論を学んでおり、製法にも詳しい。お菓子の食べ歩き歴は15年。近年は特にフランス菓子に力を入れ、フランスを巡るツアーや焼き菓子を中心としたお菓子教室も開催。監修本に「とびきりスイーツ見つけた!」。ウェブサイト「Sweet Cafe(スイートカフェ)」主宰。

平岩理緒さん

1975年生まれ。小学生のとき、訪れたデパートでスイーツの魅力に目覚める。大学卒業後、食品会社のマーケティングに携わる。2002年、テレビ東京の番組「TVチャンピオン」デパ地下選手権での優勝を機に、食の情報発信を本格化。退社後はフリーのフードコーディネーターとして活躍中。月に食べるお菓子は100種類以上。和菓子店での勤務経験もあり、和、洋菓子全般に詳しい。著書に「アフター6のスイーツマニア」(マーブルトロン)。コミュニティーサイト「幸せのケーキ共和国」主宰。