なぜ濁音は東日本に多く、清音は西日本に多く分布しているのかについて取材していくと、ひとつの仮説に突き当たった。

漢字研究で知られる早稲田大学教授の笹原宏之さんはこう推測する。

「概して、西日本では清音の澄んだ響きが好まれ、東日本では発音が濁音になりやすい傾向があるとされる。古くから、東国では『舌が濁る』と指摘する表現も見受けられる。だから、西日本では清音が主流で、東日本では濁音が多いことが、名字の読み方の法則が生まれた一因だと考えられる」というのだ。

実際、東北では「的」のことを「まど」と発音するなど、言葉の濁音化現象が起きることが知られている。

名字以外でも、たとえば「研究所」の発音を調べると、東日本では「けんきゅうじょ」と濁って発音することが多いが、西日本では「けんきゅうしょ」と濁らないで発音することが多いそうだ。これも、名字の読み方の法則とよく似た現象だといえる。

もちろん例外はあるだろうが、かつて政治、経済、文化の中心だった西日本から東日本に名字や言葉が広がる過程で、一種の方言のように発音が濁音化していったという歴史が浮かび上がる。「名字や言葉はこうして時間をかけて様々な人に使われながら、生き物のように変化している」。笹原さんはこう指摘している。

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